滑走路からの眺め
この星に初めてきた時、そこからの眺めは雄大なものだった
道すがらに転ぶ小石の一つも輝いて見えて、
脇に生える雑草も、まだ見ぬ新種の輝きを放っていた
地面に落ちる影が、すべて踊って見えたのを覚えている
もちろん不安もあったが、はやる心が期待に傾いていたのは確かだ
どのような失態も永遠も、抜け出せないような洞穴も
何もかもを愛せるように感じていた
木陰には本が一冊置いてあった
吸いつくように指先が触れて、ページをめくる手が止められなくなった
傾向は明になって、同じような物陰ばかりを探すようになった
白線が続くうちはどこまででも行けるように感じていた
多少途切れていても、自分の足が届く限りは自分の世界だった
まだ見ぬ景色も見慣れた景色に移り変わって、
少し先へと手を伸ばすことが億劫になった
気づけば、同じ道ばかりを歩いている
その中でも、少しでも楽をする方法を探して、効率化を図る
あらゆる無駄がそぎ落とされて、
余り出た時間がカーペットを汚していく、
拭けば伸びてさらに汚れてしまうようで、
億劫になってそのままにしてしまう、それでも
時折この星に来た時を思い出したかのように、
せめてもと自分のテリトリーを整頓する
心ばかし、心は軽やかになったようでいて
あくる日には倍の重圧をもって追いかけ、責め立てる
服はよれていくばかり
黒ずんだり、はたまた色落ちしたり、
思い思いの表現は欠かさないが、着実に寂れていく
この星に来た時の面影はどこにも見る影もなくなって
たまに不安になって思い出して、
忘れぬように書き起こそうとペンを握る
文具屋の閉店セールで買った赤いシャープペンシルは、
芯を無くしたまま放置してしまっていたようで、
かすかすと空振る音ばかりが聞こえている
中身のない体、空っぽの財布
もう一度滑走路を走るための燃料は無くなり
そのことに気づかないままでいる
まだ間に合うと自分に言い聞かせながら、
がらんどうの体をぽんぽこ叩いている
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