ヤになるくらい平坦な道
どこまでも、どこまでも続いていくような
単純凡々な道を歩いていると、
いつしか悪路を心待ちにするようになる
たまに訪れる曲がり角をちらりと横眼に見て、
たまには足を止めたりもして
行く先に何もないことを確認して
溜息をわざとらしくこぼす
あるいは、行く先に上り坂が見えて、
今は体調がよろしくないのだと理由を付けて
見て見ぬふりをしてしまう
そうやって、ずっと平々平坦な道を歩いている
たまに小石が転がっているのを見つけて、
これが自分の宿命なのだと酔って
できるだけ遠くまでその小石を蹴って歩こうとする
あまりにも小さな石は、靴の底に擦れるようでしか
前に進もうとはしないけれど、
足底を掠るようなかすかな感覚がこそばゆくて、
これこそがあるべき姿なのだと自分に言い聞かせる
小石はすぐに削れてなくなって、
また、見飽きた道が続いていく
脚の妙な疲れは、靴のサイズが合っていないためだ
決して、漫然とした日々で鈍りきった体の悲鳴ではない
ゆめゆめ忘れてはならない、
標準的な靴は小指が擦れて痛い
巨人用の靴は宙に浮いているような心持ちになる
適切な選択はいつも失敗していて、
振り返れば成功だったように思える選択も
やがては失敗に塗りつぶしてしまう
毎日ちゃんと寝てれば問題ないのに
それすら疎かにしてしまうのは何ゆえか
曲がり角の誘因は時折すさまじく
あらがおうとする身体を大切にすることも忘れて
自棄的な勇気で身をゆだねてしまう
それは気の迷いか夢うつつのたぐいに呑まれて
気づけばまた同じ道を歩いている、その繰り返し
何度目かもわからず、日記に書いても同じ言葉しか書けない
差異も成長も何ら見いだせず、書き出すことがない
消しゴムから文字を削り出して判を押す
ただそれだけでも十分すぎるほどに、日記の内容は似通っている
天動説が地動説にひっくり返るような驚きもない
新しい遺跡の発見も、あるいは古い技術の再発見もない
アスファルトはずっと同じ色をしている
出来立てにも要点検にも振り切れない曖昧な色だ
足を動かす動作も、ただ作業として消化されていく
現在位置の近似値で、見るところのない踊りをしている
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