病院の待合室
脛にかいわれ大根が生えてしまったので、
まだ行ったことのない医者を探して掛かる
待合室で二時間ほど待って、
ようやく対面した時には橙雲だけが残っていた
何度もらったかもわからない当たり障りのない薬をもらった
期待することはいつまでもやめられない性分
手を変え品を変え、異なる結末が導き出されるように
性格テストで嗜好を操作するような試みを続ける
ただ本質的な部分が何一つ成長しないので、
結果は二十数年、ずっと変わらないままだ
身体から生えてくる気持ちの悪いかいわれ大根を
引き抜き続けるだけの二十数年だ
醜くあることを恐れるな
プライドなんていらない
ぜんぶ、どうでもいい
人に優しくしよう
連絡はこまめに返そう
かっこつかなくてもかまわない
ありのままを体現し続けるような
物語の主人公にばかり惹かれてしまう
自分の感情に振り回されるあまり、
自分の姿かたちすらも変貌して
時には溶けて泥のようになって
時には霧になって空間を蝕むような
そんな生命力に満ちた人に惹かれてしまう
あこがれはいつまでもあこがれのままで
ファーランドの彼らにいつまでもたどり着けない
支払いのため待合室でまた二時間ほど過ごした
本当に生きている人たちが、
入れ替わり立ち替わり現れては、
物憂げな顔で去っていった
待合室には僕と似た背格好の数人が残っている
僕は彼らに仲間意識を持つが、彼らのことは何一つも知らない
結局線は交わらないままで、僕の順番がやってくる
最低限のコミュニケーションで、
それはコミュニケーションと呼ぶにはあまりにも粗末で
僕は何も考えないで帰路につく
エレベーターを使うのは嫌いなので四階から階段で降りる
当然のように誰ともすれ違うことはなくて、
僕はどこか安堵している自分を発見する
一階の扉を開ける労力ですべて忘れて
一日を終える準備を進める
日は当たり前に沈んでいく
どれだけ抗っても、明日を食いつぶすだけの時間だ
脛のあたりがかゆかった
もらった薬は効いていないようだった
次はどこへ行こうか、自分から逃げるように
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