ライブラリーの訪問
また一つ本を読んで、自分には書けない物語に毒された
とても簡単で安易な選択、手続きだから、
つい手に取ってしまい、瞬く間に汚染されてしまう
昨日までの自分はもうそこにはいなくて、
どこかすっきりとした気持ちの、目のクマが薄れた自分がそこにいる
いつだって何の気なしだ
端的な理由があるわけではない
醜悪な作品から目を背けたいがための逃避行動
思うように書き進められない自分をごまかすための消費行動
お腹を満たすのと同様だ
ただ目を背けるためだけに、愚かな選択に身をやつしている
ものの器の大きさが決まっていて、
そこに入れられるものが限られているのであれば
きっと外に掬いださなくては
何物ももはやつぎ足すことはできないはずだろうに
だくだくと飲み続ける小さな器の底には
誰が見ても一目できづく大きな穴
水が濁るのも、あるいはきれいな色に染まっていくのも
元の色が思い出せないのも、どれも悲しいことだ
せめて今この時の、この色だけは残しておきたくて
筆をもって水に浸ける
錯綜する日々の中で瞬く間に絵具は乾いて、
もはやいつのものかもわからなくなってしまった
うずたかく積み上げられた本、それらを抱え込む棚
いつ手元に置いたのかは、雄弁に語ることはできるが、
その内容は想像でしか語ることができない
人生の長さに胡坐をかいて、まだ人生が短いことに気づかない
僕には書けないものの集まり
つくらないことへの焦り
ページをめくるほどに、ただ人の書いたものを
何も生み出せないままに飲み干していく己に嫌気がさす
きっと始まりは楽しみを原動力にしていただろうに
もうなにも、思い出せない
僕の上を大股で通り過ぎていく物語の数々は
僕に焦りはもたらせど、潤いはもたらさない
雨の一粒も流さぬ、強い意志を持って
次元の一つや二つ、軽んじてまたいでいることを示す
彼らは正当な手続きを経ている、悪いのは総じて僕だ
一ページめくって、二文字書いて、
何者にもなれない物語を読んで、また次のページへ
物語の結末は近づいているように見えて、
中だるみしたストーリーはいつ見放されるかもわからないものだ
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