闊歩闊歩
街中を歩いていると罪を犯しているような気持ちになる
あるいは流行外れの衣服を身にまとっているような
誰しもの目線が気になって、気が気でなくなって、
ここにいることが、特大の不正解であるように思えてしまう
何しにも劣る己の醜さは、できるだけ目を背けて生きてゆきたいものだけど
気を利かせてか、デリカシーがないのかはしらないけれど、
自信満々に幅を利かせて、僕の中に長らく居座った挙句に、
満足げに、また部屋の隅っこに帰っていく
彼がいつどのような振る舞いをするかは僕自身にもはかることはできず
だからいつまでも、彼の様子を気にかけていることしかできない
火にかけた鍋よりもよほど気になって、気になってしまって
危うく火事になりかけたことが二度三度
逸れていくこと、脱線していくことばかりを好む話の筋は、
何一つ形にならない会話の定型文で、
人型の土人形がぱくぱくと口を動かしているようで
いかに自分がどれだけうまくやっているかをアピールしても
大人で落ち着きのある皆々様にはすべてお見通し
滑稽なものだと笑われるような日々が続いていて
真似ぶばかりの日々にも嫌気がさして、
トレースしたはずの輪郭が形を成していなくて、いっそう好ましくない己に気づく
ばたばたと手足を動かして溺れないように懸命にあがいて
隣を颯爽と泳ぐカオナシオバケの真似をして
真似るべきところを間違えて、オバケ未満の透明度
人生は先に転がることばかりを急いで、タイムリミットばかりを通知して
どれだけあるのかもわからない残り時間を指折り数えて
不正解ばかりを突き進んでいる
正解の道も、体からしたたりおちる毒液によって不正解になっているに違いない
街中の記号的な雑踏が顔をしかめて、不正解に巻き込まれまいと距離を置く
どおりでうまくゆかぬものだ
すり減った靴底、よれたシャツ、黄ばんだかばん、エトセトラ
すべてを一新してみても、本質は何も変わらないのだ
配られた手札を眺めてみて、他の人の手札、それは裏側しか見えないけれど
どうにも自分だけ異なるゲームをしているようだ
あるいは藁半紙か、パピルスパピルス
捨てようにも名残惜しくある
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