第7話:蛇ノ目_最深部
空堀の夜が、静かに明けようとしていた。
鉄の扉が軋む音を立て、
──浪速弐式。
黒地の長身フレームに、ライム色と空色、そしてマゼンタピンクのネオンが縁取られている。 白い蒸気を吐くような空気の中、その銃だけが異質に光を放っていた。
「弐式……完成したんやな」
「ああ。……最後の一撃を撃つためにな」
二人は無言で頷き合い、出発する。
目的地は、浪速区の地下深く。《蛇ノ目》の中枢最深部。 すべての黒幕、虎墨
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一、潜入:蛇の心臓部へ
地下鉄の廃路線を抜け、かつて使われていた非常口へ。 コードロックを懐飆が素早く解除し、証が周囲を警戒する。
「静かすぎる……罠かもしれん」
「せやけど、進むしかあらへん。ここが蛇ノ目の喉元や」
無機質なコンクリートの通路を抜けると、巨大な空間が広がった。 四方を監視カメラが見下ろす鉄のドーム。その中心に、一つの円形エレベーター。
懐飆が確認のためにペンダント型のインターフェースをかざすと、静かに床が沈み始めた。
「ここが……最終ステージやな」
証は《浪速弐式》のスコープに目を通し、深呼吸した。
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二、激突:虎墨弦斎
エレベーターが止まった先には、禍々しいほどの静寂。
そこに、虎墨
黒い着流し、無表情の下に隠された圧倒的殺気。
「来たか、小僧。裏切り者の娘も連れて……愚かやな」
証が一歩前に出る。
「あんたがこの街を腐らせた根源や。今日ここで、終わらせる」
「おまえらにできるか? わしは浪速の“蛇”そのものやぞ」
その言葉と同時に、壁面のタレットとドローンが起動。 部屋は瞬時に戦場へと変貌した。
「弾幕張る! 証、撃てっ!」
証はスコープを素早く覗き、《浪速弐式》を構える。タレットの赤いセンサーがひとつ、またひとつと彼にロックオンしていく。
「……ゼロからの狙撃(スナイピング・ゼロ)や!」
パンッ──キィン!
静寂を切り裂く銃声と金属の悲鳴。最初のドローンが、閃光とともに墜ちた。
虎墨が指を鳴らすと、部屋の床が開き、重装備の傭兵部隊が現れる。全員が軍用フルフェイス、アサルトライフル装備。
「この数を相手に、まだ勝てると思っとるんか?」
懐飆が汗を拭いながら歯を食いしばった。
「……思っとるよ。証が横におる限り、うちは絶対に諦めへん!」
証のスコープが懐飆の背中越しに、虎墨の胸元へ吸い寄せられていく。
「懐飆、撃たすな。おまえが生きて、語れ。……この街の再生を」
懐飆は目を見開いた。「うちは──一緒に行くゆうたやろ!」
だが次の瞬間、虎墨の命令でドローンの一体が懐飆へ一直線に突撃する。
「懐飆!!」
証が引き金を引いた。パンッ!
ドローンの頭部を貫通し、火花が咲くように爆ぜた。
けれどその一瞬で、証の肩に銃弾がかすめる。鮮血が舞う。
「くっ……!」
懐飆が叫ぶ。「証、下がれ! 一人で撃つな!」
「ちゃう……これは、うちの戦いやない。二人の証明や!」
証は片膝をつきながら、最後の弾を浪速弐式に込めた。
「撃つ。この街を壊す奴を終わらせるためにな」
そして、ゆっくりと深呼吸する──。
0.8秒後の未来、弾は虎墨の眉間を正確に貫いた。
玉座が揺れ、男の身体が、ゆっくりと崩れ落ちる。
沈黙。
残った兵たちは一瞬動けず、やがて武器を放り投げた。
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三、静かなる証明
「……やった、んか……?」
証が膝をついて動かなくなる。
懐飆が駆け寄り、その頬をぴしゃりと叩く。
「死ぬな! せやろ!? おまえ、うちに生きろゆうたやんか!!」
証はうっすらと笑みを浮かべた。
「せやな……生きるんや。これからも」
彼の手の中、浪速弐式は静かに光を失い、役目を終えたかのように沈黙した。
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