第8話:証明


夜が明けた浪速の街に、静かな光が差し込む。


の最深部での戦いから数日。


しょう懐飆なみみだれ・なつかぜは、それぞれ傷を抱えながらも生き延びた。


空堀防空壕跡。崩れたコンクリートの隙間から差し込む陽射しに照らされて、証は静かに《浪速弐式》を分解していた。


「おまえ……壊れてもうたな。でもな、おまえのおかげで……」


証は工具を置き、そっと銃身を撫でた。


そこへ、足音と共に現れた懐飆。片腕には包帯、いつものような鋭さはなく、穏やかな微笑みが浮かんでいた。


「やっぱここにおったんやな」


「……落ち着く場所やからな」


二人の間に、沈黙が流れる。だがそれは、かつてのような緊張ではない。だった。


「証」


「ん」


「うち……ずっと思ってた。アンタは死ぬことに迷いがなかった」


証はわずかに目を細めた。


「でも、アンタが最後に言った言葉──って。その意味、今やっと分かってきた気がする」


風が吹く。防空壕の上の街では、人々の生活が少しずつ戻っていた。


《蛇ノ目》壊滅後の浪速区。


混沌はまだ完全には消えていないが、それでも街は、少しずつ息を吹き返していた。


証と懐飆は、それを見届けていた。



---


一、再出発


「うちはさ。スパイやった。でも……最後にはほんまの意味でアンタの隣におった」


「……知ってた。ずっと前から」


「え?」


「でも信じたかった。を」


懐飆は、何も言えなくなった。目に光が揺れる。


「今は、何かを守るために引き金を引きたいと思っとる。……それが、俺のや」


証はゆっくりと立ち上がり、壊れた弐式を袋に収めた。


「街は終わったわけやない。蛇ノ目の残党も動くやろ。でも、もう恐れへん。おまえとおったら、どんな闇でも越えられる」


懐飆はにっこり笑った。


「……この街に、希望が射すんやな」



---


二、光差す場所へ


二人は、空堀の出口から地上へ出た。


高架下の世界はまだガラの悪い連中も多いが、それでもは、確かに存在していた。


子どもが笑いながら自転車で駆けていく。


老夫婦がたこ焼きを焼いている。


「証」


「なんや」


「この街、守ろうな。ほんまに」


「せやな。せやから、俺らのは、まだ終わらん」


懐飆が首をかしげた。


「弐式はもう使われへんやろ?」


証は、背中の袋から取り出す。


それは、新たな銃──だった。


白と黒の二色で構成され、銃身にはの文字が刻まれていた。


「これは……」


「弐式を超えるための、未来への一撃や」


証は懐飆に微笑み、銃を肩にかけた。


「さぁ、次の“正義”を撃ちに行こうか」



---


エピローグ:「浪速の狙撃手」


浪速の街。


今日もどこかで、誰かが誰かを守っている。


銃声のない朝を願いながら。


そしてその影には、一人の少年と、一人の少女。



ふたりの狙撃手が、静かに歩みを進めていた。



──

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