第6話
第6話
「仲間の女騎士であっても、手厳しく指導すると自他ともに名高いファルらしくないわよ。聖魔界にいる以上、自分をもっと高めていくべきじゃないですの?」
スネサは、どうしても納得がいかないのか、ファルの顔を覗き込んで言ってくる。
「リィンは、誰よりも無理しすぎるところがあるから、今のままでいい。スネサ、下手な干渉はやめてくれ」
ファルは、自分の言い分を変えることなく、スネサやシレナに、私を隠すように細腕を取ると、再度自らの背に隠してしまった。
「あなたは、ファルが言っているままでいいってこと?」
シレナは、スネサとともに呆れた顔を滲ませたが、半分顔を出している不安で不満げな私に気づいたのか、問うてくる。
「私は……」
「シレナ! 俺は、リィンに構うなって言っているだろうが!」
私が何か言いかける前に、ファルが厳しい口調で口を挟んできた。
「ファルこの子の意見はきいてあげないわけ? 可哀そうじゃない」
「きく必要はない。今後進路相談があるリィンには、一般公募が待っている。どうあってもリィンには、生命の危地がある道を歩ませるつもりはない」
「ファル、でも」
「シレナ、リィンを彼女の寮の近くまで送る。俺の巡回は終わっているから、いいだろう?」
不満そうに何か言いかけたスネサを遮り、ファルは話を変えてきた。
「いいけど」
「駄目! うちが休日返上して、ファルを誘いに探しにきたのですのよ。二人きりじゃなくシレナや他の仲間もいるし、遊びに出ましょう。ね?」
スネサは、ファルの腕に色鮮やかな指先を伸ばし、爪を立てて扇情的に滑らせてくる。
「俺は行くつもりはない」
ファルは、顔を顰めると、スネサの指先を手厳しく払う。
「ファル、いいじゃない。行きましょうよ」
スネサは、諦めずにファルの腕へ、自分の両手を絡ませてくる。
「スネサ、俺に触れるなって言っているだろうが!」
ファルは、声を荒げて言い、スネサを剥がし自分から遠くへ強引に退けてしまう。
「ファ、ファル……」
よろけたスネサは、寂しげに瞳を曇らせ、切なげにファルの名前を呼んでいる。
「シレナ、失礼させて貰う」
スネサに見向きもせず、ファルはシレナへ視線を送って言う。
ファルは、シレナの返事を待つことなく、私の小さな手を握り締め、引き摺るように足早に歩き出した。
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