夢語り

「ごめんね。初日はいろんな子と話したいでしょ?」

「ううん。私は叶君と話せて嬉しいよ。」

「ここは風が気持ちいんだね。」

 僕らのいるクラスは日当たりが良くて、そよ風が心地いい。

「叶君、夢はある?」

「あー!ごめんね。出会って数時間でする話がこれで…」

「…僕は__。小説家になりたい。映画を観ていると、そういった道もいいな。って。」

「まぁ僕は結構飽き性だ。叶えられるといいけどね。」

「へぇ。素敵。きっとなれるよ。叶君なら。」

 その後に彼女は「叶君、頭いいし。」と付け加え、「出版したりしたら売上に貢献させてね」と言った。

「ありがとう。」

「そういう質問をしてくるってことは真希ちゃんには夢があるの?」


「私は、学校の先生になりたい。」

「私ね、前の学校でいじめられてたの。クラスの女の子たちから『ぶりっ子すんなよ』って。そんなつもりないんだけどね。」

 彼女は冗談のように「私が可愛いからかな…」と笑って言った。

「先生は全く助けてくれなかった。勉強や人間として教育をする立場の人間としてありえないと思ったんだ。」

「…いじめを見て見ぬ振りをする人っていじめをする人と同じくらい、悪い人なんだよ。」

 彼女は吐き出すように言った。

 部外者が手を出してはいけないパターンもあるけどね。と、思いつつ、そういえば僕もいじめを見過ごしたな〜と、少し複雑な気持ちになった。

「そういう意思がある君みたいな人はきっといい先生になれるよ。」

 僕は冗談で「その先生やうちの担任みたいにはならないでよね。絶対大丈夫だと思うけど。」と言った。それに対して彼女は大きく口を開けて笑い「なる訳ないよ。反面教師な部分があるからさ。生まれ変わってあんな人間だったら早いうちに自害してるよ。」と、最後は少し真剣になって話した。

 二人で静かな教室で空をじっと眺めた。


「…!良ければメールアプリの交換しようよ。」

 ハッと思い出したかのような素振りをみせた彼女からの提案だった。

「中学校では人の数も増えるし、また同じクラスになれるとは限らないからさ。」

 僕は「じゃあ放課後に学校集合で集まろっか」と言った。


 そうして放課後、僕は少し学校の正門で待っていた。すると、向こうから彼女が歩いてきた。

「あーお待たせ。はい。これ私の友達コード。読み取って!」

「学校のことでわかんないことがあればいつでも連絡してね。」

 彼女は「ありがとう」と言って、「もう塾だから行かなきゃ」と名残惜しそうに言った。

「じゃあまた学校でね。」

 手を振り僕と彼女は別れた。


 こうして一日が終わった。


 それから特に進行もないまま、ただの日常が過ぎていった。

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