薄曇りの空の下、湿った風が土と香辛料の香りを運んでくる。旅の日々を重ねた高嶺拓央（Takage Takuo）とエルフの少女リラ（Lyra）は、ついに辺境の小さな町――ルテネルに足を踏み入れた。

「わあ、本当にすごい町だね。古くて細工が細やかで、焼きたてのパンの香り…心が和むよ！」

リラは目を輝かせて叫んだ。

拓央（たくお）は微笑みながら辺りを見回した。

「辺境の町って、こういうものなんだよな。交易商が多くて賑やかだけど、油断は禁物だ。戦火はいつ消えるか分からないからな。でも、まずは寝る場所を決めよう。ここにはしばらく滞在するつもりだから。」

「そうだね。じゃあ、まずは宿探しながら観光してみようか！」

リラは素早く頷き、二人は石畳の通りを歩きながら、布屋や鍛冶屋、木彫師の工房の並ぶ路地を楽しんで探索した。

通りには子供たちが木の盾を抱えて駆け回り、仮の騎士ごっこをしている。城壁のそばには武装した兵士が巡回しており、その表情はどこか緊張を帯びていた。停戦協定はあるが、その先に待つものを人々は皆、身構えている──そんな空気。

やがて市場の一角で、布地を扱う小さな店の前に差し掛かった。

「リラ、ここでちょっと待て。換えの服を買ったほうがいい。明日、森へ行くんだろ？」

リラは首をかしげた。

「え？　このままでいいよ。汚れてるけど、まだまだ使えるし。」

拓央は頷きながらも真剣なまなざしを返す。

「そう見えても汚れは知らずに進むからな。荷物も少し重いし、食料と地図も買いたい。君の意見も聞きたいしな。」

リラはクスッと笑う。

「もう…分かったよ。ちょっと見てくる。」

だが、そのとき──

遠くの路地から叫び声が聞こえた。

「助けてーっ！」

リラは咄嗟に飛び出していき、拓央もあとに続いた。石畳の隠れた路地で、二人が目にしたものは――若い女性が二人の男に絡まれていた光景だった。

拓央は剣を引き抜き、素早く間合いに入った。

「その女に触れるな！」

鋭い一撃で男の指を切り落とし、もう一人に強烈な一突き。その動きは機敏で正確だった。

リラはすぐに女性を助け起こし、水とリンゴを差し出す。

「大丈夫？ゆっくりでいいよ。」

女性は涙目で頷く。

「ありがとう…。リリンって言います…本当に助かりました。」

拓央は女性に優しく語りかけた。

「ケガはないか？名前を教えてくれ。」

リリンは震える声で答えた。

「はい…。リリンです…。痛いけど、大丈夫です…。」

謝意と不安の入り混じった視線で、リリンが尋ねた。

「お名前、教えていただけますか？」

リラは不満げに拓央にツンツンと突っ込む。

「また紹介忘れたの？　ほんとおっちょこちょい！」

拓央は苦笑いしながら剣を拭いた。

「俺は高嶺拓央。隣の子がリラだ。」

「…リラです。ただの『気まぐれエルフ』です。」

リラは軽く顔を背けた。

リリンが微笑む。

「ふたり、とても仲が良さそうで…なんだかロマンス小説みたいですね。」

その言葉で、拓央とリラは同時に真っ赤になり、固まった。

リラは拳で拓央の肩をつねりながら、悶絶している。拓央は急いで視線をそらし、剣を床に転がした。

その夜、三人は宿に向かい、リリンを安全な場所に案内した。拓央は明日の準備で装備を点検し、リラはそわそわと落ち着かなかった。

リリンが枕元で囁いた。

「明日…また森に行くんですよね？」

拓央は頷いた。

「そうだ。大切な目的がある。」

リリンはうるうるした目を向けて続けた。

「一緒に行ってもいいですか…？」

拓央は迷い込むように空を見つめたが、リラが小さく首を振った。

「彼女は力があるから大丈夫。助けになるなら来てもいいと思う。」

リリンは涙目になりながら答えた。

「私はユシの村から来ました。レアな“ラチオナ”という薬草が育つ場所で…」

拓央は息を飲んだ。

「ユシの村…？」

遠い記憶──妹と過ごした、懐かしい日々が脳裏をかすめた。しかし、拓央はそれを押し殺し、リラを促した。

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二時間後──

三人はついに〈死の森〉の入口に立っていた。木々は暗く高く、風は毒にも似た重さを帯びている。沈黙が異様に濃いその場に、リラが身体をすくめ、手を拓央の袖に絡めた。

「気をつけて…空気が、血の匂いがする…殺意がある…」

拓央は剣を握りしめた。

「三つ目の魔狼だ…襲撃するぞ。」

森から牙と爪、赤く光る第三の目を持つ巨大な魔狼が姿を現した。俗世ならば“魔狼王”として恐れられる存在だ。

拓央は一瞬の先読みで斬撃を叩き込み、その身を吹き飛ばす。リリンとリラは見守りながら、倒れた魔狼に駆けつけ、俊敏にその第三の目を慎重に取り外した。

「この目…薬効があるんだ。病に苦しむ獣や人間の治療に使える。」拓央は目を見つめながら囁いた。

リラはぽつりと言った。

「そんなものを、どうして知ってるの？」

拓央は微笑んで答えた。

「俺はユシの村で育った。村の賢者から教わったんだ。」

リラとリリンは驚きの表情を浮かべる。

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夜が訪れ、三人は宿に戻った。リリンは参加を許され、少し誇らしげだった。照れくさそうな笑顔を見た拓央は、気持ちをなだめるように呟いた。

「これから共に戦うだろう。君の力は大きな助けになる。」

リリンはすぐに真面目な表情で返した。

「はい…。一緒に前へ進みたいんです。」

――そうして、戦火の影に生まれた小さな絆は、これから世界を変える可能性を秘め、静かに幕を開けたのだった。

警告

[原稿の多さと物語の内容については、お詫び申し上げます。翻訳が適切ではなかったため、登場人物のセリフや舞台となる場所の名称に若干の相違がございます。 私の日本語はとても下手で、特に文学作品は苦手です。しかも自分で書いて推敲もしています。]