第10話 蘇る物語

 カラオケも、昔は結構な頻度で行っていた。今思うと男女2人きりで、しかもカラオケに高頻度で行くってのは中々すごいことだと思う。当時、付き合っていると誤解されたこともあったが、実際は全くそんなことはなく、きっと男女の友情が成立したという珍しいケースなのだろう。

 私と城崎君は、たまたまクラスが同じで、たまたま同じ部活になって、たまたま同じアニメがそこそこ好きで、どっちもたまたま暇してたから、友達になった。そしてたまたま同じ高校になったから、そのまま続くのかなと思ったけれど、今回は彼に友達ができて、クラスも離れて、話さなくなってしまった。薄い関係だったからこそ、成立したのだと分かった。そして私は独りになった。独りが怖いから、人を助けてみる。少なくとも印象は悪くなくなるだろうし、何より構ってもらえる理由ができる。誰かにとって都合のいい存在になることでしか人と関われない、情けない姿になってしまった。そんなまま2年が経った。私にとっての青春は多分2年前までで、これから先あるのかどうか分からない。だから私は考えることを諦めて、目の前にあることで精一杯にしてしまう。

「どう?2時間?」

「2時間は物足りないから3時間かな」

「お、広い部屋空いてる。ここにするか。部屋番26ね」

「ドリンクバー全混ぜする?」

「いや、流石にやらんわ」

 久しぶりの会話に少し楽しくなった。冗談ばかりで、私たちにしか分からないノリみたいなのがたまらなく好きだった。城崎君は部屋に入るなり、無言でひとつ曲を入れた。

「最近2期終わったけどさ、1期のがやっぱ面白かったよな。もちろんどっちも良いんだけどさ。エンディングだけはめちゃくちゃ良かったから歌いたかったんだけどさ。誰かの前で歌いづらくて今日初めて歌えるからテンション上がってる!」

前奏が始まる前までに言い切りたかったのか、かなりの早口でアニメの話をまくし立てた。ちなみに、私も同意見で1期はテンポが良くて、原作へのリスペクトが強く感じられたり、しっかりお金と時間をかけられていたのだが、1期があんまり流行らなかったのがあって、2期は全体的な質が落ちていたように感じた。ただ、エンディング曲が良かったのも事実で、思い返してみれば2期もまあまあ良かったのかもしれないと思い始めている。ゆっくりした穏やかな曲で、歌詞が内容とめちゃくちゃマッチしていて、今や登下校中には欠かせないものになった。ラスサビ前でマイクを渡され、最後だけ一緒に歌った。

「これ、私も歌いたいからもっかい入れるわ」

「じゃ、ラスサビで入りますわ」

前奏が泣けるんだよな、これ。長い前奏で物語を思い出しちゃうんだよ。私は大きく息を吸い、目を閉じた。

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