38
「仕事帰りですか?」
突然、肩を優しく叩かれた。
振り返らなくても、声でわかる。
その瞬間、私はやっぱり会いにいかなければよかったと矛盾したことを思った。
晴澄の前で、
うまく笑える自信なんてなかったから。
久々に見た晴澄は、春なのに相変わらず真っ黒な服を着ていて、少し髪が伸びていた。
清潔感に溢れている黒髪に恐ろしいほど映える綺麗で透き通る肌を見て、本当にこの人は健康的で私とは真逆に位置する人間なのだと痛感した。
「うん…。晴澄は買い出し?」
「いえ、今日はバイトなくて。アイス買いに来ました」
「ふっ、いいね」
自分には…、
足りないものがたくさんあるのをわかっている。
「なんか、元気ないですか?」
「そんなことないよ」
「………」
でもそれに気づいてしまったら余計に傷つくのをわかっているからこそ、気づかないふりをした。
だけど、必死に気づかないふりをしている時に、
自分にないものすべてを持ってる人には……、
「じゃあ私帰るね」
出会いたくないと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます