人生最大の幸福

37

ーー朝が来て…目が覚めれば、逃げたくなる現実を嫌でも乗り越える必要がある。

私は苦しみを糧にして生きていける強い人間だと、誰も証明してはくれないのに。


それでも目を覚まさなきゃいけないのは、

やっぱり残酷だと思った。



閉じていた瞼の向こうは、まるでそれが当然であるかのように、いつもと同じ景色があった。


ベッドの沈み具合もシーツの匂いも…いつもと同じ。

暗い部屋で、1人で目覚めるのも…いつもと同じだ。


窓の外は暗い。

今は何時だろう。

いつから眠っていたんだろう。

ていうかどうやってベッドにきたんだっけ。


「………」



頭が痛い。

ああそうか。


私は泣いてた。


色々な人に迷惑をかけたくせに、

私は間違ってないのにって心で思いながら…。


このくせ1人になりたくないと、馬鹿みたいに謝罪を繰り返した。



馬鹿みたい。

馬鹿すぎて…今はもう涙も出ない。


スマホには、遠藤さんと相澤さんから私を心配するLINEと、

伊原さんから「暫くはゆっくり休んでください」という連絡が入っていた。



私は意図しない形で、休業を迎えた。



眩しくなった窓の外をぼんやり眺める。



…自分の足で立って歩ける人は、なんて勇敢なんだろう。


些細なことで笑える人は、なんて輝いているのだろう。


悔しさを押し殺して我慢できる人は……、どうして自分自身ではなかったのだろう…。



「はる…」



今1番、会いたい人の名前を呼びかけてやめた。


また弱ったところを…見せるのだろうか。

その優しさに…縋るんだろうか。



皐月さんの時みたいに。



ただただあなたの顔が見たくて、

声が聞きたくて、

優しい言葉が欲しくて。



励まして欲しかった。




その光で、私の闇を隠して欲しい。

全部じゃなくていいから。

少しでいいから。



そう思って外に出た頃には、もう空は暗くなっていた。


仕事をしているわけではないのに、

また、時間の感覚を失ってる。


でもあなたと会うのは夜が多い気がして、

暗くなってから家を出た。



こだまへいくのはいつぶりだっけ?

サトリさんと会話したのはいつが最後…?


わからないから教えてほしい。

教えて、慰めて、全部。



全部。




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