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「は?」
「私の人生をよく知りもしないあなたに大したことないなんて、言われる筋合いはないです」
私の人生に関わってくれた人たちが“それ”を少しずつ変えた。
確かに甘いと思う。
甘えてると思う。
それでも、今の自分を許せそうな気がするのは…ダメだと思う自分を、当然のように…何事もないように受け入れてくれる人がいてくれるから。
当たり前のように優しさをくれるから、時々見逃してしまいそうになる。
それをちゃんとわかりたいって、
なるべく見逃したくないって、
そうやって過ごしていく人生は、
決して悪いものじゃないって今は思えるから。
それに……、
“俺はそれが心配です”
「それにこの会社の編集さんは皆立派な人です」
あんな風に自分を心配してくれる人がいる。
きっとそれだけで本当は…人生は十分なんだ。
「先生…?なにやってるんですか…?」
遅い私を迎えにきた伊原さんの声は状況を飲み込めず焦ってるようにも思えた。
「ああ君か…彼女の担当は」
「塙山先生…」
「立派とは言い難い、生意気な編集じゃないか」
嗚呼…駄目だ。
嫌いだ、この人。
この人には、心がない…。
「伊原さんをそんな風に言うのはやめてください」
「ふっ。青臭いねぇ。その威勢のよさ…若さゆえなのか」
「………」
「苦労してれば頑張ったことになるのか。頑張っていれば認められるのか。そんなのを求める時点で未熟だと思わないか」
もう手がつけられないと悟った塙山さんの担当が伊原さんに駆け寄って現状を説明しているうちに淡々と言葉を並べられる。
今までならこの高圧的な態度に反抗することもできず、ただただ「そうなんだ」と、飲み込むことしかできなかった。
いつも諦める方を選んできた気がする。
色々言われても仕方ない人生だって。
「私は30年この世界にいるが、君みたいな小説家を何人も見てきた。断言できる。君の作家人生は…長くはない」
言われっぱなしでもよかった。
よかったはずなのに。
…どうしてこの時は諦めなかったんだろう。
黙っていられなかったんだろう。
「30年いれば…未熟ではないと?」
「………」
たった一言。
その一言で、大きく人生が変わった。
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