22

真っ直ぐに向けられた気持ちを拒むことは、

勇気が必要だと思った。


本当は気持ちを向けている側の方が、

何倍も勇気がいるはずなのに。



…このまま流されてしまった方が楽だとも思った。


きっと皐月さんは私が迷っても手を引いて、真っ直ぐ道を案内してくれるような気がするから。


だけど…、

だからこそ、

嘘をつきたくない。




「そっか…そっか〜…」



皐月さんは脱力したように俯き、そう呟いた。


1日一緒に過ごして、家まで着いてきて、

正直…ひどいと思う。



「皐月さん…私…」


「いやわかってる。本当は俺も…気づいてたから」


「え…」


皐月さんは少し目を赤くして笑った。

気づいてたって…何を…?



「ごめん…ちょっとだけ」



そう言って皐月さんは、私をぎゅっと抱きしめた。


皐月さんの温もりと香りが全身を通して伝わる。

心が揺れる。

こうして人に抱きしめられたのは一体いつぶりだろうか…。


なにも、言葉にならない。


「本当は違う結果で抱き締めたかったんだけど…」


「っ」


「俺はまた…早急すぎたかな」


そう言って離れて見つめた皐月さんは、

目が赤かったけど、

どこか清々しい表情をしていて、

反対に私は苦しくなった。


「次は…俺が応援するよ」


「何…を」


「ん?内緒」


「?」


「よし、じゃあ帰ろう!駅まで送る!」


さっきまでの雰囲気が嘘だったかのように皐月さんは明るい。


明るい…っていうか、多分、

明るくしてくれてる。


駅までの道はなんとなく気まずかったけど、

ちゃんと皐月さんに伝えなくちゃならないことがあると思って足を止めた。


もう皐月さんと2人でこうして歩くことはないかもしれない。

だけど、それでも、

伝えたいことがある。



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