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「まぁ今でこそあたしに対してもあんな感じだけど、あたしが雪平と再婚した当時の槙江は、なんていうか人を寄せ付けないオーラがあって、話さないわけじゃないんだけど、どこか独特な空気感を持ってたのよね。それこそ…本当に寝てるとこなんて見たことなかった」
「………」
「あたしじゃ、あの子を外に連れ出してあげられなかった…。正直、怖かったのよね。嫌われたくなかったし」
「槙江さんは…人を嫌うようなタイプに見えないですけど」
「そうなのよね。晴澄、よく見てるわね」
その後も、サトリさんは自身が飽きるまで昔の話をし続けた。
雪平さんとの馴れ初めや、槙江さんと打ち解け始めた時のこと。
そしてそのまま自分のタイミングで上に上がって休んでしまった。
本当に、自由な人だ。
俺は店を閉めた後、槙江さんを背負って家へ向かった。
歩くたびに、槙江さんの首元で今日作ったネックレスが揺れて光る。
まったく起きる様子がなくて、本当に危なっかしい人だと思った。
寝たって言ってたけど、この様子じゃ本当は昨日もあまり眠れていないんじゃないかと思った。
「軽…」
…俺の料理が好きで食べれるなら、毎日でも作るからちゃんと食べてほしい。
眠れないなら、眠くなるまで話して…いくらでも聞いて、いくらでも話すのに…。
「槙江さん、鍵とりますね」
一応確認したけど、返事はなかった。
槙江さんの鞄から鍵を取り出し家を開けると、以前きた時は綺麗だった部屋が、少し散らかっていた。
服が、あちこちに広がっていて、
明らかに今日の服選びをした後だった。
ただの……練習なのに。
槙江さんをゆっくりベッドに寝かせて、その寝顔を見つめる。
困ってたから、ほっとけないと思った。
震えながら、自分はダメだなんていうから、そんなことないって教えてあげたかった。
自分の著書を誇りに思う姿を見て、
俺の弁当を食べて泣き笑いする姿を見て、
ものづくりが好きだと笑う笑顔を見て、
服選びに散らかった部屋を見て、
「槙江さんは…可愛いよ」
気持ちよさそうに眠る君を、
今日…愛おしいと思った。
大丈夫だよ、槙江さん。
自信持って。
皐月さんは……ちゃんと見てくれるよ。
槙江さんのこと。
…大丈夫だよ。
「おやすみなさい」
髪を優しく撫でて家を出た。
鍵をかけて、それをドアポストの中に入れる。
今日は暖かいと思ってたし、さっきまでなんとも感じてなかった夜道を、今はとても寒く感じる。
さっきまで背中にあったはずのぬくもりを思い出すと、どうしようもない気持ちが込み上げた。
遠くて、小さくて、それでも必死に光り輝く星を見つめて、
ただまっすぐ、君に幸せになってほしいと思った。
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