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大丈夫…って思えば思うほど、不安は募っていった。

不安が募ると執筆が進まなくなる。


それを振り払うようにスマホを取り出して、マッチングアプリをダウンロードした。


“あんた、結婚したら?”



その言葉を思い出したから。


今はアプリで婚活するなんて普通だし、条件が一致するなら悪くないのかもしれない。


名前や仕事や趣味の他にも入力項目がとにかくたくさんあったけど小説家であること以外はなるべく素直に書こうと思った。


生活能力に乏しいこと。

睡眠障害のこと。

コミュニケーションが得意ではないこと。

他にも、あまり晒したくない部分も全部。


書けば書くほど自分のダメな部分を思い知る。

言語化するのは好きだけど、自分のことはなんだか嫌だと思った。


そもそも学生時代から人付き合いが1つもうまく行ったことがない、恋人もできたことのない人間に婚活やアプリは難易度が高いかもしれないと不安でしかなかった。


それでもアプリの力はすごくて、そんな私でもすぐに何人かとマッチングした。


マメに連絡を返すことは億劫だと思った。

だけどとにかくこの状況が少しでも変わることを信じて頑張った。


そして1番メッセージで長く話が続いた同い年の男の子と直接会って食事をする約束をするところまで来た。

その人とだけは会話のテンポというかレスポンスのリズム感というか、好きな小説について語ったりすることもできたから。


ーーだけど結局上手くはいかなかった。


理由は多分色々あったけど……いや明確だ。


食事中に話しながら眠ってしまった。

お酒が入っていたわけでもないのに。

起きた時にはもう彼はいなかった。


そしてその帰りになんとも言えない気持ちでサトリさんのところへ行く。



「あんた寝落ちとかやば!おもろすぎるでしょ」


「話が下手な…向こうが悪い」


「あのね女は聞き側に回ってなんぼよ」


「はぁーっ…もう嫌っ。結婚なんて絶対無理」



サトリさんに結婚を勧められて1ヶ月。

生活を改善させるための婚活のはずが、慣れない連絡のやり取りや気疲れのせいで余計に苦しくなっている気がする。


大体いるわけがない。

こんな事故物件みたいな女を好んで結婚したいと思う人なんて。


「家事好きだから頼ってくださいとか言っておきながら寝落ちに怒って帰られるし、寝取りを期待してホテル誘ってくるような男もいるし…」


「あらなんか楽しそうね。あたしもやろうかしら」


「サトリさんやったらモテそう」


「…ふっ。冗談よ。死んだあんたの父さんが悲しむでしょ」


「………」


お父さんが2年前に事故で死んでから、1人でスナックを経営しているサトリさんを見たら、お父さんはなんて言うだろうか。


まだ若いし、多分アプリ始めていいよって言うんじゃないかな。

再婚してもいいよって。


…でもこう見えてサトリさんは一途な人だから、多分もうしない。

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