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「戻りました」


冷たい風と一緒に入ってきた声は吐息混じりで少し寒そうだった。

そういえば今日は晴澄を見てなかった。


手にはトイレットペーパーとスーパーの袋を持っていたからまた買い出しかな?って思った。

髪も服も全身真っ黒で、マフラーまで黒いから夜道はこの人を認識するのが難しいだろうななんてどうでもいい事を考えてしまった。


「おかえり〜晴澄聞いて。今日槙江男の前で寝落ちたんだって」


「すぐに晴澄に報告するのやめてください」


「知ってますよ。今日うちのレストランきてたんで」


「え〝っ…!?晴澄あのレストランで働いてたの?」


「あんまり厨房からはでないんですけど、たまたま人手がなくて料理運んだらいたんでちょっとビビりました」


「それは…変なとこを見せちゃって…」


「つまらない話をする相手が悪いんですよ」


「………」


「気にすることないです」



晴澄がそう言うのは意外だった。

晴澄こそいつも聞き役そうだし、

じゃあ晴澄ならどんな会話をするのか気になった。


「晴澄」


「…なんですか」


「晴澄ってショートスリーパーなの?」


ヤケ酒の勢いもあってか、珍しく自分から晴澄に話を振ってみた。


「なんですか、突然」


「朝からあのレストランで働いてるんでしょ?ディナーまでやってこの時間からスナックきて、いつも夜中の2時くらいまではいるよね?専門の時からいたからあんまり疑問に思ってなかったけど今は働いてるのにと思って」


「……まあ、そこまで寝なくても大丈夫って程度ですよ。休みの日とか寝る時は寝ますけど」


「へぇ…」


それ以上会話は続かなかった。

晴澄が買ってきたものを置きに裏に行ってしまったから。


話役とか聞き役とか…それ以前の問題な気がする。


私はそもそも人としてどうなんだろう。

まともな生活ができないことに加えて、人とのコミニケーションもあまりしてきていない。

友達と言える友達もいない。


小説や絵本みたいな、空想上の中で物事を考えて生きてきてしまった結果だと思う。



「帰ります」


「え、あんた1人で帰れんの?上泊まっていけば?」


「自転車で帰るから大丈夫」



店を出てすぐに今までアプリで知り合った人たちの連絡先を消した。

ついでにアプリも退会してアンインストールした。


なんだか色々なものが馬鹿馬鹿しくなってきた。


アプリで出会う男も、自分自身も。


大きく息を吐き、自転車を走らせようとすると、誰かにくいっと後ろからマフラーを引っ張られた。

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