第13話 第二次グレンツグラーベンメーア海戦・中編

 この戦いは彼が機雷を散布したこと、そしてそれに連合軍が気付いたことを発端とする。機雷が直撃すれば木造船はまず助からない。連合軍は機雷が敷設されていないと思われる、つまり彼の艦艇が巡回している地域からの侵入を試みたのである。そして、竜による攻撃も試みた。その動きを察知した彼は、爆撃機を投入、この戦いの火蓋は切って落とされた。


 まず、ドラゴンと爆撃機が接触した。爆撃機の彼による解説はこれだ。


———

・A301型爆撃機 "Archeopteryx・アーキアペトリクス"

 諸元

  全長33m

  翼幅65m

  最大離陸重量90000kg

 装備

  円偏波三軸レーダー16基

  イルミネータ4基

  近距離空対空ミサイル24連装発射機*10基

  爆弾倉ペイロード7600kg

  8bitコア16基、16bitコア8基

 備考

  有人機・全翼機・翼端垂直尾翼・翼端逆テーパー水平尾翼・後退翼

———


 ここからわかることは、コレには彼が乗っていた可能性が極めて高いことである。おそらく、短期間での自動化は無理だったのだろう。また、自動飛行に計算機の容量を食われないため、想像よりも計算能力が高いと思われる。そして "近距離空対空ミサイル" という記述から、対空戦闘も可能であったと思われる。


 これとドラゴンが合わされば起こる事は一つ。ドラゴンは相対的に攻撃力が足りず、これは逃げられない。結果として艦隊が出撃するより前に両軍とも制空権を確保しようとしたため、前哨戦が非常に長引いたのであった。


 両軍ともこれを分かっていたのか、連合軍は対艦攻撃をハナから考えず上空を警戒し、彼は爆弾倉に追加で空対空ミサイルを装備したらしい。ホント神経質だなぁこの野郎。


 彼の目、 "レーダー" は本来、200km圏内なら余裕で探知できる。しかも、彼は今回の教訓でより高出力、多数の質の悪い真空管アンプを平均化して感度を高める回路と、真空管の質の悪さを補うための技術的に簡単で質がいい磁気増幅器の二系統による高感度でよりレーダー性能が向上している。彼によれば「後のレーダーの見本」らしい。このあたりで技術的に成熟したらしい。


 結果として30海里先の雷雲の中のドラゴンを探知、爆弾倉の長距離空対空ミサイルを発射し、命中・撃墜している。これがこの戦いの初戦果である。また同時に、ドラゴンたちに自機の位置を教える事となり、この世界初の本格的な空中戦が始まった。


 まず、竜部隊は攻撃が飛んできた方向に向い方向転換、捜索を開始した。いくら彼のような目がないとはいえ、彼の爆撃機は巨大で高空を飛んでいる。十分に肉眼で視認できただろう。現に、彼らはちゃんと彼を発見している。しかし、それに手間取った間に次々とミサイルが飛んできて少なくない損害を負ったのもまた事実だ。


 しかしミサイルの網を数で突破し、ついに1km圏内に入った。それまでの間には短距離空対空ミサイルの網もあり、この時点で損耗率はすでに55%に達していた。とはいえ撃墜された彼らも追加装甲板と救助隊のおかげで死者はかなり少なかった。そして、彼らは勝利を確信した。いくら半数以上墜ちても元の数が多い。攻撃には十分と思ったその時、彼らは全機撃墜された。


 原因は彼らが忘れていた海上戦力、P201級とP301級からの長距離艦対空ミサイルであった。彼の目はそこら中にあり、たとえ近づけても他の兵器が彼らを撃墜したのである。ここに、制空権は彼の手に堕ちたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る