第12話 第二次グレンツグラーベンメーア海戦・前編

 これと、これより後の戦いの特徴は、両軍共に誇りや誉れ、騎士道精神や正々堂々という概念が全くないという所である。ある種、正々堂々というものに見切りをつけた頃である。


 まず、彼が行ったのは爆撃機という積載重量の大きい航空機の開発と、機雷および魚雷という走る機雷の開発である。そして "リレー" や "サイラトロン管" 改良、およびその技術的発展型の "真空管" と似たような効果を示す "磁気増幅器" の開発である。彼曰く、


「機雷による海域の制限、そして制限外の領域に敵艦隊を誘い込み、爆撃機からの魚雷の空中投下で方を付ける。」


 ようだ。また、"ソナー" という音によって探知する機器で暴風雨の中でも探知できるようにしようとしたらしい。そして爆撃機は鈍足で、防空圏の外に出るため防衛武装が必要と彼は考えたようだ。曰く、


「航空戦力が敵にもいる以上、何が何でも墜とされる訳にはいかない。鈍足かつ高高度を飛行するという特性上、地対空や艦隊空ミサイルのΔVを犠牲にグラウンドカッター処理能力を向上させ機動力を上げるべきだろう。」


 何かは知らんが、多分今まで開発した物を転用しようとしているのだろう。畜生! あんなのが空にいてたまるか! 今もいるがな! クソが!


 それに加え、魚雷はP101級など、小回りが効き接近できる艦船に搭載すると有効な攻撃手段となる。


 また、連合国軍はドラゴン等に装甲板の取り付けおよび照準器の改良を行った。もちろん、一撃死を避け、命中弾を与えるためである。また、遊泳訓練を行い、救助隊を整えとにかく帰還率を上げようとした。救急救命体制の確立である。


 そして彼らの24ポンド砲の命中率はまさに極悪であったため、それの改善策としてブドウ弾を搭載、そして砲口にラッパ状のケースを付け装填速度を上げようと試みた。つまり下手な鉄砲も数打ちゃ当たる作戦である。


 さらに、彼らは空対空を想定していなかったため急遽空対空戦闘を訓練する羽目になったのである。ついでに、速度がある目標に対する偏差射撃の訓練もすることになった。もちろん、彼の航空戦力やP101級などの高速目標を破壊するためである。



 これらの改装は、凄まじい空域制圧戦を生んだ。原因はそれぞれの艦艇の対艦攻撃力にある。まず、連合軍は今まで通り射程と火力が足りない。最大射程こそ長いものの、当たらないので有効射程がかなり短いのである。また、彼は魚雷を採用したことで失探せずに済むようになったものの、射程距離が縮んだ。そのため、それぞれ空から攻撃したほうが圧倒的に有利であり、そのため不利にならないように相手を撃墜しようとしたため、結果制空権が非常に重要となって空域制圧戦を生んだわけである。

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