第11話 第一次グレンツグラーベンメーア海戦・後編

 前哨戦の後、本格的な海戦が始まった。だが、この戦いは泥沼化することになる。それぞれ連合軍は技術力の無さにより、彼は数と天候によって互いに有効打を与えられない状況になった為だ。無理もない。ここは本来、海戦を行うには絶望的に適していない場所である。誰が熱帯低気圧と乱れる海流の中で海戦をしようと思うのか。だが、防衛するという目的において、互いに最適であったためこうなったのだ。


 さて、このような状況における海戦が、海戦の体をなす訳がなかった。連合軍は戦列艦でありながらもその天候と海流のせいで単縦陣などの陣形を取ることが極めて困難となっていた。また彼の兵器もその雨によって目を妨害され、よく当たらなくなっていた。


 結果、3海里まで接近していた54隻のP101級が放った攻撃はそのほとんどが目標を失探し、外れた。これは彼の当時の計算機器の限界による点も大きい。当時彼が使っていた "リレースイッチ" や "サイラトロン管" というものは、そこまで質が良くなく、そのため反応速度が遅かったのだ。その結果大量の雑音を除去し切れず外れたと思われる。また、質の悪さや構造および素材に起因する衝撃への耐性の無さも原因として挙げられる。


 また、連合国側も、24ポンド砲の最大射程圏内には入れていたものの、揺れが酷すぎて無誘導兵器では照準できず、命中させられなかった。ガレオン船の高重心と、四輪式の砲火が悪影響をもたらしたようである。


 この戦いは丸一日続いたものの、互いに有効打を与えられず終了した。しかし、この戦いは第一次では全く終わらない、長い長い戦いであった。


 また、この戦いの成果として、この海域に島があることが分かったことである。彼は、その島がある海域をTG4Sβと名付けた。そして互いに、次の戦いに備え、装備を固め始めたのである。


 主に、彼の進化がすごかった。なんせ初の大規模システム、故に改善点や情報が大量に取れたのである。彼は、とある事を思いついた。機雷による海域封鎖と、残った海域に侵入した際の爆撃による破壊である。


 また連合国軍も対策を練っていた。奇しくも彼らも空から攻撃しようとしていたのだ。魔族にはたくさんの種族、そして魔法がある。飛行魔法やドラゴンだってある。また彼らは身体能力的に優れており、魔法と組み合わせるとすさまじい防御力を発揮する。また数があるため、ある程度の損害を覚悟すればどうにかなると踏んだのであろう。再び彼らはこのグレンツグラーベンメーアに踏み込もうと画策したのである。

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