第8話 長き戦いの始まり
あの総攻撃の後、我々は軍隊による抵抗力を完全に喪失した。軍隊で対抗できないとなれば普通は経済で締め上げるだろう。だが奴は技術立国で人口が3桁もない。2桁あるかすら怪しい国家に対し経済的締め上げはあまり効果を成さない。研究によると、彼の国家の目標は "Undestroyable, Unknowable, Unstoppable" の3U、破壊不能・不可知・制止不能と言われている。まさにその通りだ。
だがしかし、彼の目標に我々を支配することは含まれていない。確かに今も支配はしていない。なんなら恩恵もある。だが確実に自然な状態ではない。たとえば海だ。ヴァルデシア近辺の海域はすべてヴァルトハイムの支配領域下であり、軍艦は自由に航行できない。また貿易船も自由に行き来できないため、結果として香辛料などは完全にヴァルトハイム経由じゃないと手に入らない。その他この大陸で手に入らないものはすべてヴァルトハイム経由だ。
だが王家は困らない。考えても見ろ。もう1600年前の一家族はいまではどれぐらいになっているか考えたことはないか? そりゃあ凄まじい数になりあの小さい国じゃ賄えないだろう。どうするかといえば、嫁に出したり婿に出したりするのさ。そりゃあいくら "彼" に及ばなくてもこの世界基準ならかなり頭が良い。なんなら取り合いになるレベルだ。結果としてこの世界の王家などは常に "彼" の一族の親戚であるため入手に困らない訳だ。クソが。
その副作用として、必然的に王族の婚姻相手はヴァルトハイム一族だし、それが最高のステータスだ。そして、彼らの頭脳を持ってしても "彼" の思考は意味不明だそうだ。ただただ異世界出身で知ってたからというだけでは無さそうだ。
また彼の構築した絶対防衛識別圏を突破する糸口も一切見えない。彼らのおかげで彼について知ることが出来ているがさすがはUnknowableを掲げているだけはある。1600年間の間で、彼が最初に使ったFinger Missile Systemすら突破できないのだから。またLRSRGBMSとかいうやつのせいで、我々は一切逆らえない。
そんな奴等に対抗する手段は太古よりたった一つしかない。 "目には目を、歯には歯を、バケモノには化け物を" だ。当時の彼らも同じことを考えたらしい。彼らは敵対していた "魔族" に助けを乞うた。やはり、理解できないものとただの敵では、前者の方が恐ろしかったのだろうな。
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