第5話 総攻撃作戦
当時、彼らの取りうる手段は総攻撃しかなかった。彼のほぼ唯一の弱点は「一人である」こと。その弱点に対して最も有効な解決策は数によって多角的に攻めることであった。彼らは戦略軍を持たないとはいえ、大陸で団結した場合それは戦略軍として十分に機能するものであった。
当時の彼らの主兵装は前装式の銃と魔法であった。両方とも有効射程が25m~50mであり、近距離専用であった。当時としては中距離だが、"彼" がいるため相対的に圧倒的短距離となるのだ。砲もあったが、どの道射程距離があまり無かったのには変わりなかった。
また航空戦力も生物に依存している他、同様に極めて射程が短く彼の攻撃に対して有効であったとは考えにくい。
そして海上戦力はガレオン船などに砲や集団魔法で武装したもので、やはり射程距離が圧倒的に足りていなかった。
しかし彼らは知らなかった。彼の少し前の日記にはこう書かれている。
「ようやく三角関数表と二進対数表が完成した。数学は実に便利だ。またそのおかげで計算機資源と実験する余裕が出来た。昔の魔法の本から傾向を分析し物理学的に考えると、どうやら魔法はその空間の二体間の相対速度および特定方向への観測者視点の加減速、そして特定の空間に情報や励起を生み出すものと定義できる。ならば、比較的定量化は簡単だろう。」
とある。つまり彼はこの世界の法則、魔法に適合したらしい。相変わらず理解はできないが、とりあえず魔法をなんかの現象と定義し、それに対して簡単だと言っているらしい。事実、この後急激に新兵器の性能が上がった。奴が使っている学問の名前は "数学" や "物理学" と言うらしい。知ってるか? コイツ1600年前のすでに骨になった、いやもはや骨すら残ってない人間なんだぜ? バケモンすぎるだろ!
まあいい。連合軍は416/7/2に総攻撃を決行したらしい。だが、もちろん勝てるわけもなくあっけなく全滅した。被害を与えることすら出来ず、普通に全滅した。そりゃあそうだ。今の我々ですら勝てぬのだ。勝てるわけない。本当にこの人1600年前の人間だよな?
そんな野郎の研究を俺なんかに任せるんじゃねえよクソッタレの大学め! こんなことなら好きで人がいないなんて理由で歴史を選択するんじゃなかったよホント! 教授も優しそうと思って選択したが、今じゃあのクソ教授の気持ちもよく分かるよ! 同類を増やしたかったんだろそうだろ!?
はぁ......はぁ...... 愚痴を言ったってしょうがない。話を続けるぞ?
結果彼は付近の陸および海、空の実質的領土化に成功した。これから先の戦いはしばらく少数精鋭の隠密攻撃と報復攻撃の防御というなんとも地味な戦いとなる。そりゃあ軍隊がほぼ壊滅したんだからそれしか手段がないだろうさ。
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