第4話 ACTCC議事録
当時の貴重な文献の一つ、ACTCC議事録。ACTCCはAll Continental The man Countermeasures Council、全大陸 "The man" 対策議会の略称だ。The manという呼称の初出もここだ。そして我々 "The man" を研究する者たちのルーツもここだ。なお、この中の日付は現在使われている彼の独立戦争の勝利を0年1月1日とした神聖歴ではなく、コンティヌス歴を採用している。なお、インジールは現代では旧神聖国と言われている。
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日付:413/6/9
場所:フレチスカ帝国首都・フレストブルク
・出席者
ドレイゼン帝国残党軍代表:クロイヒ・ヴァイス准将
ウエストバニア連合王国代表:レオネラ・バスティオン王女殿下
イリーガランド王国代表:セリウス・ヴェル=エノート枢機侯
フレチスカ帝国代表:ラズラ・ネルメティク参謀公
インファーレッド王国代表:ザイデル・ヴァルグラム総務卿
アルンアース王国代表:ティル=オロウェン元帥
インジール神聖国代表:アナベール・ザファルシア聖統監
それぞれ上からK,Le,C,La,Z,T,Aと略記
La:これより、"The man" 対策会議を始める。では状況の整理からだ。彼によって沿岸国ドレイゼンは国家としての機能を喪失、沿岸地域およびウエストバニア国境付近の彼の支配地域に対し、ウエストバニア経由で接近、善戦したものの謎の光によって壊滅、敗走。今回の議題は今後どのように彼に対抗するかだ。
A:ああ、なぜ神は我々に味方してくださらんのか...
Le:そんな事言ってもどうにもならないわよ。彼は、我々に理解できない方法で攻撃してくる。そんな相手に対しては数ぐらいしか手段がないわ。
K:その通りだ。戦術で彼に一切対抗できない以上、我々は戦略で対抗する必要がある。ヤツのことはもはや人間とは思わないことだな。
T:では、何をする? まさか降伏するなんてことはあるまいな?
Z:当たり前だ! たった一人に対し多数の国家が降伏するなどあってはならない! ...だが、現実的には数と包囲による攻撃しか手立てがないのも事実だ。あの小さな土地でもやつの力があれば一家族を養うことぐらいは出来よう。
C: 我々聖職者にも、彼の力は理解できない。しかし、あの "彼の光" は我々の聖典に記された終末の徴に酷似している。彼の力は、人が手にしてはならぬもの。我々は彼を神罰の対象と見なし、異端の裁きを下すべきだ。聖騎士団を招集し、彼の地に聖戦を布告する。
Le: 無謀よ、セリウス。 ドレイゼンを消し飛ばしたあの "光" が、本当に神の力でなければ? 人の手が及ばぬ力に、聖戦などと名付けたところで何が変わる? 彼は我々の信仰すら利用するかもしれないわ。我々が知るべきは、彼の力の源よ。それを解き明かさなければ、未来永劫、彼の手のひらで踊らされるだけ。
T: レオネラ王女の言う通りだ。感情論ではヤツは倒せぬ。現状、彼の拠点には空の戦いへの準備が不足していると思われる。そして我々には竜騎兵がある。もし、彼が我々の空にまで及ぶ力を持っていないのなら、我々の唯一の希望はそこにある。全軍を動員し、地上からの包囲と同時に、竜騎兵による飽和攻撃を仕掛けるべきだ。
K: 地上からの侵攻は、先のドレイゼンでの惨状を見れば分かる通り、歩兵の消耗が激しすぎる。だが、元帥の言う通り、空からの攻撃ならば……。我がドレイゼン残党軍は、竜騎兵戦力こそ劣るが、地の利を活かした陽動と、彼の兵器の足止めには尽力しよう。
Le:私には海軍がある。我らは海から攻めるわ。そもそもここから空軍戦力を飛ばしたって気づかれて迎撃されるのが関の山よ。
La: よろしい。では、具体的な作戦立案に入ろう。目標は "The man" の無力化と、彼の兵器の確保。あらゆる資源と兵力を結集し、この脅威を排除する。各員、帰国後直ちに軍備を整え、来るべき決戦に備えよ。この会議の決定は、決して外部に漏らしてはならぬ。いいな!
—会議終了
その他にも色々な文献があるが、この記録からは弱点があった初期でさえ彼の強さが圧倒的であったということが読み取れる。そして彼ら連合軍が現代同様一切の解析手段を持たないことも。だが彼らには限定的ながらも対抗手段があったようだ。それもそのはずこの時点で彼は絶対的な制空権と制海権を持っていないただの一地域に過ぎなかったからだ。彼はこの後謎の数表を完成させた後から急激に進化し始める。唐突にだ。それを追っていこう。
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