①超機カプウ、誕生と成長

「母上のお腹の仲あったかかったナリwww」


 この話を聞かされた時、私はアイツに対してすでに軽蔑しかしてなかったけれど、その軽蔑がさらに深くなった。


 先程の一言は、彼が母親のお腹の中から出てきた時のセリフだ。

 あまりにキモい。「なんで赤ちゃんのうちから喋ってんの?」──ということが全く気にならないくらいキモい。

 実際、出産の現場にいた人達も押し黙ったらしいし。

 でもまあ、その数秒後、生まれたばかりの赤子が言葉を発したことに気付き、驚いて腰を抜かしたのだとか。


 そんなアイツは子どもの頃から魔具に興味津々だったらしい。


 魔具。それは、少量の魔力とその他エネルギーを使用して動かす道具で、とても環境に悪いものだ。


 全ての人が魔法を使えるこの世界において魔具の存在価値など微塵もなく、では何故そんなものが開発されたのかと言えば、答えは『昔の人々は魔法が使えなかったから』だ。


 魔具の歴史は古い。それは魔法という技術が進歩する前から存在している。

 そう、魔具を使用していた昔の人々は、魔法を使えなかったのだ。魔力を放出することはできたが、その魔力に五元素の性質を持たせることができなかったのだ。故に、五元素の性質を持つ魔具を使用して魔力の性質を変換していたのだ。


 しかしながら、何度も言うが、現代の人々は魔具なんてなくても五元素の魔法を扱うことができる。

 故に、火の性質を持たせるために燃やした火種を入れておく必要があるので木の無駄遣いや二酸化炭素の排出をしてしまったり、水の性質を持たせるために綺麗な水を必要とするので、水を汚染してしまったりする魔具は全く必要がないのだ。


 これから未来を生きていくアイツのような子どもが機械に興味をもつのは、ズレていると言わざるを得ない。


 しかし、それでもアイツは機械に興味津々だった。

 毎日毎日「父上母上! ワレ新たな機械を欲すwww」などと新しい機械をおねだりをしては、分解し、機構を図面に起こし、魔改造して遊んでいたそうだ。


 アイツが5歳の頃に発明した全魔導計算機という機械は世界中で使われている唯一の機械だ。(仕組みは誰にも分からない。この機械はアイツしか作ることができない。まあ、その機械を作る機械をアイツは作り上げてしまったようだけど……)


 と、こんな話をしていると、アイツが機械の知識のみならず、魔法の知識にも優れていると思われてしまうかもしれないが、そんなことはない。

 というか寧ろ、逆。

 アイツは生まれながらにして、五元素魔法を使用することができなかった。

 産まれた瞬間に言語を駆使し、5歳にして全世界に広まるような機械を作り出した天才のアイツだが、この世界で生きていくにはあまりにも大きなハンデを抱えていた。


 しかし、アイツは魔法を使えなかったのではない。

 アイツは特別な魔法を使うことができた。

 それは『0と1の魔法』

 私もよく分かっていないので、アイツが言っていた言葉をそのまま述べるのだが『無機物に簡単な動作を記憶させる魔法ですぞwww」だそうだ。


 アイツが私の前でそれをやってみせたのは、私が住んでいた村を救ってくれた時だった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る