壱 豪暴イカリ、誕生と成長
私は捨て子でしたが、エドモンド家という辺境伯様に拾われました。
辺境伯様は私を屋敷につれて帰ると、そこにはお腹を大きくした奥様がいらっしゃいました。
奥様は少し困惑した顔で辺境伯様に尋ねました。
「もう少しでこの子が生まれるのよ?」
辺境伯様は言いました。
「しかし、この子は捨て子だ。あのまま放っておいたら野犬の腹の中だ」
辺境伯様の言葉に奥様は静かにため息をつくと、私の頬に触れて言いました。
「では、あなたは今からエドモンド家のメイドです。エドモンド家に恥じぬ振る舞いをなさい」
私はまだ状況を把握できていませんでしたが、自分の命のために大きく「はい!」と返事をしました。
──
それから数カ月後。私がメイドとして少し働けるようになった頃のことでした。
奥様の陣痛が始まりました。
私は奥様の汗を拭きながら「頑張ってください!」と声をかけ続けました。
すると奥様は初めて会った日のように頬に手を添えて「あなたはこの子の良き姉になりなさい」と強い声で言いました。
そのお姿はとても格好良く、私の心に響きました。
私は強く「はい!」と返事をしました。
そして、ついに赤ちゃんが生まれまし──
「おめぇーらあんまりギャーギャー騒いでぇと口に米ぇいっぺえ詰めこんで喉詰まらせてやるぞこのべらぼうめぇ!」
全員が口をポカンと開けていました。
──
それから5年。
イカリと名付けられた男の子はすくすくと育ち、とても強い子になりました。
しかしながら、この世界においてあまりにも悲惨な欠点を抱えておりました。
イカリ様には、生まれつき魔力が流れていなかったのです。
魔力を調べたとき、辺境伯様が静かに首を振り「だめだ。 この子には魔力がない」と呟いたとき、イカリ様は言いました。
「だめだァ? 何がだめなのか具体的に言ってみろ! 魔力が何だってぇんだ! そんなもんは肉体の脆い軟弱もんにしかいらねぇんだ!」
うん。さすがイカリ様。
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