2 なんか泣いてるので救っちゃいマッチョ
「なんか燃えてて草」
燃えているのは私の村です。
「山賊笑っててワロチ」
山賊たちは私の村を蹂躙して笑っていました。
「人に迷惑かけて笑ってるのってマジシャバくね。
クソダサで草」
本当に、そうですね。
「まあ、早いとこ解決しムキムキ」
ヘッチャ様はそう言って周囲を見渡しました。
「木のツル発見マツケンマクラーレン」
そして、木のツルに魔力を付与しました。
「草で高速拘束で草」
そう言ってヘッチャ様が手を振るうと、木のツルはまるでヘッチャ様の手足となったかのようにシュルシュルとのびていきました。
そして──
空が木々に塞がれる。揺れるばかりだった森が大口を開けて我らを飲み込まんとしている。
それは、まるで森が村を飲み込むかのような、恐ろしい光景でした。
──
「火も消しちゃうちゃうちゃうんちゃう?」
ヘッチャ様が息を吹くと、魔法陣を通り抜けた吐息はミントの香りのする大風となって大火のみを吹き飛ばしました。
空へ吹き上げられた大火はミントの吐息に空高くまで連れて行かれると、空の冷たさで自然と消えていきました。
「……」
その様子を見ていた村人達と、木のツルに拘束された山賊達は目を丸くしながら状況の理解に努めました。
「え、なんか村人達が鳩丸になっちゃってんですけど笑」
そこへ、ヘラヘラと笑いながらやってきたのがヘッチャ様。
私達の村を救った救世主様でした。
「いや驚きSUGI。こんなんコーンフレーク前だし笑」
歩いてヘッチャ様の元へ、一人の少女が駆け寄りました。
「あの、あなたは村に伝わる伝説の救世主様ですか?」
「いや子どもゴメス。マジ意味不」
「……?」
「首傾げてて草」
少女はヘッチャ様の言葉を理解できずに首を傾げました。……この時はまだ、慣れていませんでした。
「……俺、伝説の勇者とは関係ない系。マジ通りすがりの辺境伯だし」
「辺境伯様……」
少女の目に輝きが灯っていきました。
「辺境伯様すごい!」
「いや、持ち上げんのやめろし笑。こんなん当たり前だし笑」
そこへ、はしゃぐ少女の声を聞きつけたのか、総長がやってきました。
「村長登場マジ卍笑」
「辺境伯様。何とお礼を言ってよいか……」
「は? お礼とかマジいらんし。そんなん用意されても困るし笑」
「いえ、しかし! 我々の命の恩人を手ぶらで帰すわけには行きませぬ!」
「は? 手ブラじゃねぇし。お前らの笑顔はきちんともらったんですけど。マジ笑顔眩しSUGI」
「なんと……なんと……」
「おい村長泣くのやめろし。涙とかマジ萎えるし笑」
「それでは、せめて宴をさせてくださいませ。我々にあなたへの感謝を伝える機会をくださいませ」
「は? 困るし。そんなン開かれたらシャバSUGI。俺もう行くし」
「待って! 待ってください! 辺境伯様!」
そう言ってヘッチャ様は私達に背を向けて歩き出しました。
「辺境伯様……ッ!」
「……」
ヘッチャ様の腰に手を回し、抱きついた少女がいました。
少女は普段、そんなことをする大胆な子ではなく、おとなしい少女でしたが、その時ばかりは勇気を振り絞りました。
少女はこの時、感じていたのでした。
この人なら、村を救ったこの人ならば、私のことも救ってくれるのではないか──と。
「いや、子どもの涙はズルだし笑」
ヘッチャ様はそう言って、少女の頭を──私ことを撫でました。
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