第16話 それは夢か幻か
「勇士たちよ、囚われの我が身を解放していただき感謝いたします」
美しい微笑を浮かべ、女神レダは僕たちの顔を見る。
僕はカシナートの剣を鞘に収める。
「そなたらに我が分身を授ける。武運を祈ります」
そう言うと女神レダのほっそりと美しい体が淡い光に包まれる。
その光が消えたあと、女神レダは完全に消えていた。そこに残ったのは青いビキニアーマーだけであった。
アリエルがそのビキニアーマーを拾いあげ、豹塚瑠璃に差し出す。
豹塚瑠璃はきょとんとした顔をしている。
それはまあ、ビキニアーマーを眼の前に持ってこられたらそんな顔になるか。
「幻夢の女神レダの鎧です。瑠璃様、あなたがふさわしいと愚考いたします」
アリエルはほんの少しだけ頭を下げる。
「この幻夢の女神レダの鎧を装備すれば、回避率が九十九パーセントとなります。さらに敵に幻惑の魔法効果を与えることができます」
アリエルがていねいにビキニアーマーの効果を説明する。
「そやな、これは確かに瑠璃ちゃん専用やな」
母さんがビキニアーマーの上の部分を見つめて言う。
「そうね、わたくしが着たらいろいろはみだしますわね」
鷹城玲奈は爆乳を両手で押さえる。
たしかにこのビキニアーマーはほっそりとしたスレンダースタイルの女神レダが着ていただけあってサイズは小さめだ。
僕は思わずサイズの小さいビキニアーマーを着た母さんや鷹城玲奈を想像した。
たしかにいろいろとはみ出しそうだ。
豹塚瑠璃はそのビキニアーマーを両手で受け取る。
「たしかにアリエルちゃんの言う通りなら、ものすごい効果だとおもうけどこれをきるのはちょっとね。そうだ、お兄ちゃんはこれをボクに着てほしい?」
小首をかしげてビキニアーマーを両手に持つ豹塚瑠璃にそう聞かれる。
それはまあ、見たくないと言えば嘘になる。
「うーん、見たいかな」
できるだけいやらしくないように僕は言った。
でも、内容としてはビキニアーマーを着てほしいということなので完全にアウトだと思う。
訊かれたから答えたけど、完全にセクハラだ。
しかしながら、豹塚瑠璃はうれしそうだ。
着ていたタンクトップを脱ぎだした。
スポーツブラがあらわになる。
豹塚瑠璃は母さんや鷹城玲奈に比べたら小さいが、それでもその胸はお椀型でよく肉が詰まっているように思う。
これはこれでなかなかいいものだ。
豹塚瑠璃はスポーツブラに手をかけたので僕は背を向けた。
それにしてもここにいる女子たちは無防備だな。
僕の前で普通に着替えようとする。
「お兄ちゃん、着替えたよ。アリエルちゃんの言う通りサイズぴったりだわ」
僕がふりむくとそこにはファンタジーゲームやアニメに出てきてもおかしくないほど可愛らしい女戦士がいた。ビキニに包まれた胸はささやかながらもきっちりと谷間がある。豹塚瑠璃は陸上選手のようにひきしまったスタイルをしているのでこの小さいサイズのビキニアーマーがよく似合う。
「むちゃくちゃ似合ってるよ」
僕は思わず心の声を漏らす。
正直、女性のタイプは鷹城玲奈のようなエロいスタイルであったが豹塚瑠璃のビキニアーマーはそれをうわまわった。
おっぱいは大きければいいと言うものではないというのを思い知らされた。
「うふふっ…… ありがとうお兄ちゃん」
それにボクっ娘にお兄ちゃんと言われて慕われるのはこれはたまらない。
この娘とつきあいたいなんて場違いな感情が心の端に芽生える。
「あら瑠璃似合うじゃないの」
何故か鷹城玲奈は僕をジト目で見る。
「瑠璃ちゃん、可愛いやん」
母さんは瑠璃に抱きついていた。
「それでは鴉の悪魔アンドラスを撃破した報酬として禁則事項の一つを解除いたします」
瑠璃のビキニアーマーで盛り上がる僕たちをよそにアリエルは粛々と説明する。
アリエルの言葉のあと、僕は耐えがたい眠気におそわれた。
あの戦いは楽勝ではなかったがここまで疲れたか?
眼の前の母さんと瑠璃はだきあいながら座り込む。すーすーと気持ち良さそうな寝息をたてている。
鷹城玲奈がその長身を僕にあずけてきた。
秀麗な顔を見ると目をつむり、眠っている。
鷹城玲奈の体の柔らかさに感動を覚えたが、僕も意識を失ってしまった。
太陽の光もほぼ差し込まない深い森の中、その銀の甲冑を着た男は手を合わせていた。
眼の前には彼が倒した
赤黒い血がたまり、沼になりつつある。
周囲は死臭にみちていて、気の弱いものがみたら気絶してしまうだろう。
黙祷を捧げるその銀の甲冑を着た男にもう一人の人物が駆け寄る。
その人物は白銀の髪をした美しい女性であった。耳が笹の葉のようにとがっている。それは彼女が
男の横に立ち、彼女は見上げる。
銀甲冑の男は長身の
「勇者カズマ。おまえはいつもそうしているな。こいつらは我らの同胞を犯し、殺した憎き魔族。鎮魂の祈りなど不要だ。このままサーベルジャッカルどもの餌になるのがこの者どもの最後だ」
そうはいいながらも
「不思議な風習だな。確か勇者殿の故郷の作法だったか。まあでもその鎮魂の意味は分からないでもない」
銀甲冑の男は兜をとる。
その男は黒髪をしていて、日焼けした肌の頰には大きな刀傷が走っている。
「まあ、これは俺の自己満足のようなものだ。こいつらに一族を殺されたおまえのまえですることではないかも知れんがな」
頰に傷のある男は苦笑いする。
「それでは勇者カズマ、私の心を傷つけた償いをしてもらおう」
「償いとはなんだ
「ふふん、それはこれだよ」
姫巫女アリエスは背を伸ばして頰に傷のある男にキスをした。
「あ、あれは和馬じゃないの……」
目を覚ました母さんが嗚咽混じりにないていた。
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