第10話 団らん
バベルの塔を後にして、僕たちは自宅に戻る。
どういう
実家は田舎なだけあってけっこう広い。僕の大阪市内のワンルームとは比べものにならない。
築年数は古いけどところどころリフォームはしてある。母さんは綺麗好きなので、掃除を行き届いている。鷹城玲奈と豹塚瑠璃が来たところでどうと言うことはない。悪魔で部屋のスペースの話だ。
鷹城玲奈と豹塚瑠璃は十分過ぎるほど美人なので、僕の方が緊張してしまう。
バベルの塔の探索でならなんていうことはなかっけど一緒に住むとなると話は別だ。
いつものように気にせずにお風呂にいったら二人のうちどちらかが入っていたらどうしよう。
そんな愚にもつかないことを考えていたら、実家についた。
「ほんならあたしお好み焼きつくるから待っててよ」
背中の軍用リュックを僕に預けて、母さんはキッチンに向かう。
「わたくしたちは着替えてきますから」
「ボクも着替えるわ」
鷹城玲奈はブーツを脱ぎ、豹塚瑠璃はスニーカーをぬいで家にあがる。
「空いている部屋好きにつかっていいから」
母さんはキッチンへのドアを開けながら彼女らにそう言った。
鷹城玲奈と豹塚瑠璃はそれぞれはいと返事をする。奥の空き部屋に入る。
しかし、彼女らはどこに荷物を持っているのだろうか。
疑問に想いつつ、僕は自室に入る。
母さんのリフォームを床に置きく。このリュックの中身が六億円近い価値の神霊石だと思うと今さらながら緊張する。わが家のセキュリティは大丈夫だろうか。
田舎の家特有のおおらかさがあるから、セキュリティ面では心配だ。
セキュリティ面は後回しにして、僕はデニムとTシャツに着替える。
お風呂は食事を終えてからで良いだろう。
着替え終わり僕はダイニングに降りていく。
ダイニングのテーブルにはホットプレートが置かれていた。電源はすでにオンにされ、熱されている。
母さんはボールに入った具材を手際よく混ぜている。
「瞬君、お皿用意して」
僕は母さんの指示通りに皿を四枚用意して、テーブルに並べる。
母さんは豚の薄切りばら肉をホットプレートに並べて焼いていく。
こんがりと焼けていく豚ばら肉の匂いが食欲を刺激する。
豚肉がカリカリに焼けたところに母さんはふんわりと混ぜた具材をのせる。綺麗な円形に具材を整える。
パチパチとお好み焼きが油を弾く。
母さんのお好み焼きはふんわりとした食感で美味しんだよな。本当に店レベルなんだよな。
「いい匂いね」
鷹城玲奈がダイニングにやってきた。
長い黒髪を下ろしている。プライベートモードなのだろうか。ロックバンドの黒いTシャツにスリムのデニムという装いだ。
ロックバンドのTシャツなんてださいと言われがちだ。だけどた鷹城玲奈みたいな美人がきたらオシャレに見えるから不思議だ。
「うわっ美味しそう」
豹塚瑠璃もやってきた。
彼女は黒いジャージ生地のワンピースを着ていた。ほっそりとしたアスリート体型の豹塚瑠璃によく似合う。
「さあさあ、焼けてきたで」
母さんは僕が家に置いてきたスウェットの上下を着ている。もう首元のゴムなんかはだるだるになっている。ゆるんだ首元から胸の谷間が見える。
しまった。
母さんにブラジャーを買うのを忘れている。なんでノーブラなんだよ。
「ほら焼けたで」
ノーブラのことなんか気にしていない様子の母さんは焼けたお好み焼きをそれぞれのお皿に乗せていく。
空いたホットプレートにまた豚肉を乗せていく。
「まだまだあるからね。あんたらいっぱい食べてや」
母さんははりきっている。
料理好きの母さんはいっぱい食べてもらえるのがうれしいようだ。
もともと母さんはにぎやかなのが好きなタチだからね。こういうパーティーみたいのが大好きなのだ。
一人暮らしでそういう機会があまりなかったので、今日ははりきっているのだろう。
「いただきます」
僕は皿に乗せられたお好み焼きにソースをかけてマヨネーズもかける。かつお節を書けると熱で踊るのが楽しい。
「お兄ちゃんってマヨかけるタイプなの?」
お好み焼きにソースとマヨネーズをかける豹塚瑠璃は訊く。
「ああ、そうだよ」
「じゃあボクと同じだね。ボクたち気が合うね」
にこやかに豹塚瑠璃は笑顔を浮かべる。
「お好み焼きはソースだけで良いのよ。マヨネーズをかけたら味がぶれるわ」
たしかに鷹城玲奈の言うことにも一理ある。
お好み焼きは生地のふんわり感と肉のかりかり感、ソースのこくを味わうものだ。
マヨネーズをかけたら美味しいけど邪道と言われればその通りだ。
二枚目はシンプルにソースだけでいこう。
お好み焼きを食べながら、僕たちは会話をはずませる。女子が三人集まれば、かしましいと言うけど本当にその通りだ。
聞いているだけで楽しい。この三人で雑談系のZチューブ番組でも始めたらいいのに。
三者三様の美人だからきっと受けるだろう。母さんの実年齢さえばれなければの話だ。
「あたしの
母さん、
瑠璃は元同僚の鷹城玲奈を誘い、このバベルの塔の探索にやって来たということだ。
「瑠璃ちゃんが痴女みたいな人連れてきたから驚いたわ」
母さんはお好み焼きをひっくり返す。
たしかに母さんの言う通り潜入捜査官みたいなラバースーツを着た鷹城玲奈はエロかった。
「もう嫌ですわ、お母さま」
ほほほっと鷹城玲奈は上品に笑う。
「まあ、それも慣れたけどな」
母さんはお好み焼きにソースをかけて、ふりかけをかける。ソースにふりかけを入れるのが母さん流だ。
食事を終えたあと、母さんと瑠璃は自身のチャンネルに冒険の様子をアップした。
梨香の冒険チャンネルと瑠璃のお宝探しのコラボ企画だ。
今回も母さんのチャンネルはバズりバズる。それは瑠璃も同じだった。
「あの潜入捜査官みたいな人エロすぎる」
「瑠璃ちゃん、がんばれ!!」
「梨香さん、応援してます!!」
「玲奈さんの揺れ半端ない」
「梨香さん、スライム撃破おめでとう」
「えっあの男の人、動き早すぎるんですけど」
「潜入捜査官の魔法かっこよすぎ!!」
コメントが絶え間なく流れていく。
動画を見ていて僕はあることに気がついた。
画面にははっきりと写っていないが、もう一人の気配を感じた。
僕は瑠璃に頼んで気になる場面をコマ送りにした。
僕たちがスライムと戦闘をしている廊下のはるか彼方に何者かが写っていた。
黒いマントを着た人物であったが画像が荒すぎてよくわからない。
この人物は何者だろうか。
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