第3.5話 魔王のいない魔界、意外とカオス

地獄の門が、開かれっぱなしだった。


「………閉めろよ!!!」


灼熱の業火に包まれた中央宮殿<サタニック・ハイヴ>では、参謀のベリルが絶叫していた。その隣では、巨大な封印球の中で”第七魔獣(仮名:パワパワくん)”がぷかぷか浮かんでいる。


「もう!!陛下がいない間にパワパワくんが暴れて!!地獄テレビの天気予報はずっと”謎のカツ丼推し”になってるし!!」


重臣会議室には、魔王・ヴァルセルグ不在により集められた「臨時魔界運営チーム」のメンバーがひしめいていた。


〜臨時魔界運営チームメンバー紹介〜


・参謀ベリル(ツッコミポジ。唯一まとも)

・技術長グロロ(常に爆発音とともに入退場)

・財務官スリィーグ(金勘定しか頭にない)

・第七魔獣パワパワくん(ガラス玉の中から無言で威圧)

・謎の影(ただのヤジ要員)



「とにかく!!魔王陛下が不在のままでは、次元の安定が取れないんですッ!!」


「おーい、それより地獄の湖が全部スープに変わってるって報告あったけど、あれマジ?」


「マジだよ!!しかも”味噌ベース”だってよ!!たぶん人間界から影響受けてるぞ!!」


「味噌ォ!?それは……新たなる禁呪か……?」


「違うわ!!」



通信魔法陣が開き、魔界ラジオ局から放送が入る。


『今週の”魔王様今どこに?”のコーナーですが……なんと、東京都葛飾区のカフェでパフェをお召し上がり中との情報が……』


「また食ってんのかァァァ!!!!」


「というか、魔王様に”今週のコーナー”できてるの地味に人気出てムカつくんだけど!?」


そのとき、影の一人がぽつりと呟いた。


「……でも……なんか……良さそうだよな、”カツ丼”」


「お前もか!!!!!」




同じころ、魔界の郊外。


見張り役のインプ数名が、地獄の岩場に”人間界食レポ風”の落書きをしていた。


「”本日の罪人メニュー:焼き鮭定食with闇のソース”」


「”地獄のプリズンブレックファスト〜目玉焼き地獄風〜”」


「ちょっと楽しそうになってるじゃん!!」




夜。


宮殿の大広間には、魔王不在の玉座がぽつんと残されていた。参謀ベリルは、一人で書類の山に埋もれながら呟いた。


「…はやく戻ってきてくださいよ……カツ丼とかパフェとか食べてる場合じゃないですよ……いや、カツ丼美味いけど」


その時、玉座の足元から謎のチラシが一枚舞い上がった。


<次回予告:特製カレーうどんin人間界!>


「ふざけんなよ陛下ァァァァァァァ!!!!!」


ベリルの絶叫が誰もいない宮殿の中に虚しく響いた。



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