15怖目 『人形』

 学校の帰り道、ゴミ捨て場に捨てられている小さな人形を見つけた。


 髪はおかっぱで、真っ赤で美しい着物をまとったお人形。


 ――連れていって。


 くりくりと大きな両目が、そう訴えているように見えた。


 私は人形を持ち帰った。


 だけど、お母さんは人形を見るなり、顔をしかめて言った。


 「そんな汚い人形、捨ててきなさい」


 「ごめんね」


 私は元のゴミ捨て場に行き、人形をそっと置いて帰った。


 けれど次の朝、人形は私の部屋の机の上に置かれていた。


 「捨ててきなさい!」


 私が捨てなかったと思ったお母さんは、また私に人形を捨てるよう強く言った。


 「ごめんね……お母さんが、持ち帰っちゃダメなんだって」


 私は再び、ゴミ捨て場へ人形を置きに行った。


 翌朝、お母さんは家の階段から落ち、意識不明のまま救急車で運ばれていった。


 お母さんが落ちた階段の上には、あの人形が座っていた。


 恐ろしくなった私は、人形を近所の川に投げ捨てた。


 その夜。


 息苦しく、頭がさえて眠れなかった。


 朝のことを思い出さないように――そう思うほど、なかなか眠れなかった。


 やっとウトウトしかけ、寝返りを打って体を反対に向けた瞬間。


 顔の目の前に、気配を感じた。


 ハッとして目を開ける。


 ――そこに人形がいた。


 私をじっと、動かない目で見つめている。


 目が合った刹那、人形の顔がぐにゃりと歪み、怒り狂った表情になった。大きく口を開けて――


 『――捨てるな!!!』

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