文字の読めない者たち
小狸
短編
さる小説投稿・閲覧サイトに登録し、小説の投稿を始めてから、そして同時並行で
例えば僕が1つの小説を投稿したとする。すると他の方は、その小説に対する「応援コメント」「おすすめレビュー」「星1~5による評価」を行うことができる。
凝視して
「コメント」の前に「応援」という文字が書かれていることが、分かるだろうか。
分からないと思うので説明するけれど、応援という言葉の意味を調べると、
一、 他人の手助けをすること。また、その人。
二、(競技・試合などで)歌を歌ったり声をかけたりして味方のチーム・選手を元気づけること。
とある。
恐らく、ここまで言ってもまだ分からない方というのが存在する。
するのである。
いや、もはやこれこそ、現代のホラーなのではないか、と思ってしまう。
実際、僕はこの小説をホラーのジャンルに設定するつもりである。
語義を丁寧に説明し、理解してもらおうしてもらおうといくら努力したところで、「いや、私の中では違うから」と言われてしまえば、それまでなのである。
そういう人には、関わらない方が身のためである。
何が言いたいのかというと、「応援コメント」と書いてあるんだから、そこには「応援」する文章を書こうよ、ということである。
それができないということは、自分には「応援」するだけの語彙がない、自分は人を「応援」する文章構築能力を有していないと認めているも同じである。
僕の小説には、往々にしてそういう読者が存在する。
「応援コメント」の欄を、自らのお気持ち表明の場所とでも勘違いしているのだろう。つらつらと長文で、「この表現はおかしい」だとか「こういう描写が駄目」だとか「これは気に食わない」だとか、好き放題言ってくるのである。
まあ、僕としては――僕の小説を読んで何を思おうが自由だと思っている。小説は作者の手を離れ、読者に伝わった時点で、その思いや、気持ちや、文脈や、感想は、読者のものになる、そう思っている。
だから極論何を思っていただいても構わないのだが、それを世に残る形で発露するのはどうなのか、と言っているのである。時には、それを見た他の人が不快に思うかもしれない。何を思っても構わないが、何を言っても構わないわけではない。残念ながら、そんなこと程度も分からない連中が、この世にはうじゃうじゃいるのである。
インターネットの発展により、誰しもが世界にポストを発信できる時代になった。便利な時代になったものだが、一歩まかり間違えれば、そのポストは世界中に広がる危険性を
何度も言うように「応援」なのである。
その勘違いが一番多い。一体何度、「お前の小説は稚拙だ」「私の指示通りに直せ」とコメントされたことか、数えきるには時間が足りない。
まあ、そういう人々の心の隅と刺激する小説を書いている僕の作風の
ご自身の創作論、執筆論、人生経験に基づく思想を持っているのは素晴らしいことだと思う。それを開陳したいのなら、人の「応援コメント」欄ではなく、ご自身の小説なりSNSのアカウントなりで披露してほしいのである。
ここでやるな、と言っている。
こんなことを臆面もなく言うと、「いやいや、その程度の叱咤激励を受け止められないんじゃ、作家なんてやってられないよ?」などと言う者がいるかもしれない。
それはお門違いも
プロでも何でもない素人が、一批評家を気取って、「叱咤」だと?
「激励」だと?
ご自身の言葉に何か強い影響力があると勘違いしているのではないだろうか。
フォロワー数だとか、閲覧数だとか、投稿数だとか、評価した数だとか、リポスト数だとか、「いいね」数だとか。
そういう目先の数字ばかりを追いかけて、自分は偉いと勘違いして、見当違いの過激で注目の浴びる言葉ばかりを投稿して、承認欲求を稼いでいる
実際、批評や講評は、プロの方に頼むから、必要ないのだ。
皆が普段、大学の学部学科について、「文学部なんて就職先に困る」「文学科なんて勉強して何の役に立つの?」と嘲笑の対象にしているけれど、こういう時に役に立つではないか。
再三言うが、そこは「応援コメント」を書く場所なのである。
もう一度語義を確認しようか?
と。
こんな風に
何かを履き違えた者、自分が攻撃されたと勘違いした者、過去に叱咤をした自分を認められない認めたくない者、素直に文脈を受け取らないひねくれ者、批評と非難の違いも分からない者、現実と虚構の区別のつかない者、人の小説を鏡のようにして自分の人生と重ね合わせて己の不満不平を言わずにはいられない者、自分の主義主張が絶対に正しいと信じて疑うことができない者。
彼ら彼女らは相変わらずこれからも、僕の小説の「応援コメント」の欄に、好き放題書き殴ってくることは、目に見えて
そんな者たちが、このサイトの中には
これが現代の怪異でなくて、何なのだろうか。
(「文字の読めない者たち」――了)
文字の読めない者たち 小狸 @segen_gen
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