【常識が通用しない神の世界】

シャスタの説明とリリィの言葉を聞いたシヴァ神が、子作りする気満々で話を進めようとしている。


レイフに常識を問われたが、早く息子が欲しいから2人いっぺんに産ませると言っていた。

シヴァ神には既に息子がいるのにと、少し面白くなかった。


いや、リリィに聞いた話だともう一人いたな。

シヴァ神がその息子を産ませた相手は──



「二人もいるだろ、息子。ガネーシャ神とカールッティケーヤ神。あ、アイヤッパンもいたな。」



少し揶揄からかってやろうと笑って言ったのだが、シヴァ神の反応がおかしかった。


シルビアに禁句だと言われ、更に、ヴィシュヌ神に騙されたと教えられた。

だが、騙されたのは下心があったからだ。

浮気症のシヴァ神が悪いと言う俺にシルビアも同意する。


反論するシヴァ神をシャスタがなだめ、怖いのはヴィシュヌ神だと笑っていると、そこへ噂のヴィシュヌ神が顔を出し……


任務の為にした事だと笑っていた。



『任務の為なら男とも寝る』



何だか聞いたような台詞が耳に入り、苦笑した。


すると聞き覚えのない女の声がして……

振り向いたシヴァ神が悲鳴をあげる。


そこには、物凄い美女が立っていた。



「すごい……。これがモーヒニー……?色気ムンムンの美女ね……。」



シルビアの言葉で彼女の正体を知る。


これがヴィシュヌ神の化身した姿か。

確かに美人だが、その正体はヴィシュヌ神だ。


それなのに動揺しているシヴァ神と──レイフもか……。

情けない奴だな。



「ダン兄ちゃんは平気なんでしょ?」



「ああ。精神的な問題だろ?」



男相手に惑わされる事はない。

女が相手でも、リリィ以外の女には──



「さすがダンさんですね。ふふ、素敵です。」



「!」



くそっ、神相手では通用しないのか!?

この俺が鼻血を流すとは何たる不覚!



「ダン、気にする事ないわ。相手は神様なんだもの。」



介抱しながらそう言うリリィ。

相変わらず俺の考えはお見通しのようだ。



「だが、シルビア達に醜態を……」



恥を曝したと嘆いていたのだが、シルビア達の意識は既に他にあった。


何がどうなったのか、シルビアとヴィシュヌ神が戦っていた。

というか、ヴィシュヌ神がやられていた。


こいつも相変わらず最強だよな──っ!?


増えた腕にビクッとした。

またあのイタチごっこが始まるのか……。



「壮絶だな……」



「ほんと。シヴァ神様とは比べものにならないわね……。」



20本になった腕。

通りかかったソフィアが悲鳴をあげ、その視界から遠ざける為にシャスタに蹴り飛ばされたヴィシュヌ神。

シヴァ神相手とは違って手加減はなく、ヴィシュヌ神は気絶していた。



「ダン、座っても良い?」



「具合悪いのか!?」



「いいえ、少し疲れただけよ。」



さすがのリリィも、壮絶なバトルを見て気疲れしたらしい。


常識が通用しない神々の宴だ。

当然といえば当然だろう。



「俺も疲れたよ。はは、後は俺達だけでゆっくり楽しむか。」



「ええ。あ、その前にお願いがあるんだけど──」



ふふっと笑ったリリィの要望は、あちこちに設置された料理だった。

リリィの食べたい料理を皿に取りながら、笑ってテーブル席に移動する。


そこで料理を摘みながら、賑やかな宴会を眺めていた。


神々と人間が笑い合う賑やかな宴会。

きっと、言われなければ彼らが神だとは分からないだろう。



「世界的に考えても凄い事なのに、何だか当たり前に思えちゃうわね。」



「はは、そう思うって事はかなり慣れたって事だよな。」



頷き、微笑んで腹を撫でるリリィ。

早くこの光景を見せてあげたいと、マリアに向かって言っていた。


腕10本で踊るシヴァ神や、演武を披露するシルビア達。


神々の宴は本当に何でもありで……

この日の宴会で、マイケルさんは20歳若返った。


長年人々を救って来た彼への、アシュヴィン双神と創造神からの恩恵らしい。

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