【妹夫婦はシヴァ夫婦の分身だった】

「ん?パーティーでもするのか?」



ソフィアの指示の元、メイド達が慌ただしく動いていた。



「シヴァ神達の引っ越し祝いと、ガネーシャ神の婚約発表するんだって。まったく、神々は宴好きよね。」



「か、神々って、まさかまた!?」



「ええ、そのまさかよ。あ、ガネーシャ神、神々の席ってどう作れば良いですか?」



「特に拘らなくても良いよ、適当に座るから。あ、でも──」



ソフィアとガネーシャ神が話し合う中、俺は一人かぶりを振っていた。


リリィが興奮して産気づいたらどうするんだよ。

まあ、万が一の事があっても……神々が何とかしてくれるかもな。



「とりあえず先に言っとくか……。」



少し楽観的に構え、リリィにパーティーの事を伝えに行った。


当然の如く興奮するリリィだが、一度神々の宴会を見ている為か、すぐに落ち着きを取り戻していた。

少しずつだが、確実に慣れていっているらしい。



「とにかく、産気づかないよう気をつけろよ。」



「はい。肝に銘じておきます。」



ふふっと笑うリリィだが、俺の気は休まらない。

多分、マリアが産まれるまで気を張り続けるだろう。



シヴァ神達の引っ越し祝いが、ガネーシャ神達の婚約発表会に変わる。


次々と湧き出る神、神、神。


天界から瞬間移動しているらしいが、まさに神出鬼没だった。



「ああっ、神妃様も、きゃあっ、お会いした事のない神様まで、」



前夜祭のメンバーが神妃連れで降りて来た。

更に新しい神も増えている。



「リリィ、落ち着け。」



「う、はい……。」



深呼吸するリリィを椅子に座らせる。


本来は立食パーティーなのだが、リリィとエリーの為に椅子のあるエリアが準備されていた。



「リリィさん、また興奮してんのか?ほんと身体に障るぜ?」



「わ、分かってるんですけど、初見の神様がたくさんいらしてるから……」



レイフにも心配され、苦笑していた。

そのレイフの横で、エリーが腹をさすっていた。



「エリー?大丈夫か?」



「あ、はい。ちょっとお腹が張ってるだけですから。」



「そうか。もう二週間もなかったよな。無理せず座ってろよ?料理ならレイフに取りに行かせれば良いんだからな。」



「おう!食いたいもんがあったら遠慮なく言えよ!」



任せろと胸を叩くレイフに、エリーは早速料理を頼んでいた。



「あー、リリィとエリー、ちょっと来い。」



パーティーの最中、シヴァ神に呼ばれ赴いた。



「何だシヴァ神。妊婦をあまり歩かせるな。」



「ダン、神様に失礼よ。」



それよりもリリィの身体の方が心配だ。

そんな俺に、動いた方が良いんだとシルビアが言う。

同じくエリーの身体を心配するレイフに問われ、シヴァ神が目的を話した。



「安産祈願するぞ。」



安産祈願か。

さすが恩恵も与える神だな。



「うわ、シヴァ神優しいな。破壊神のくせに。」



「だからそれだけじゃねえっつーの。リリィ、ちゃんと教えとけ!」



そう言ってシヴァ神はどこかへ行ってしまった。

シヴァ神の恩恵の事を説明されたレイフは、破壊神なのにと感心していた。



「ナーサティヤとダスラだ。どっちがどっちかは本人に聞いてくれ。」



戻って来たシヴァ神が双子の神を紹介したのだが……結局、どっちがどっちか分からず終いとなった。

苦笑する双神に安産を約束してもらい、礼を言う。



「じゃあ、次はシルビアな。」



「お前、妊娠したのか!?」



驚いて尋ねると、していないと言う。

聞けば、安産祈願ではなく妊娠の準備をするらしい。

しかもシヴァ神との子を産むと言っている。



「何でシヴァ神の子を産むんだよ。非常識な奴だな。」



「え?シヴァも夫だから良いじゃない。」



「それは化身だった時の話だろ?まさかシヴァ神と不倫してるのか?破廉恥にも程があるぞ。」



やっぱり昼間のあれは……メイクラブだったのか……?



「あれ?ダン兄ちゃん聞いてないの?私とシャスタはシヴァとパールヴァティーの分身なのよ。」



「分身?詳しく説明しろ。」



面倒がるシルビアの代わりにシャスタが説明した。



「そういう訳で、私とシヴァは同一の神であり、シルビアとパールヴァティーも同一の女神なんです。」



「だからどっちも夫だって言うのか?」



「はい。私達にしても、どちらも妻になるんですよ。」



分身で夫婦……。

夫が二人いる妻と、妻が二人いる夫……。



「神の世界にはついていけないな。」



「俺も~。不思議すぎてついていけね~。」



エリーもついていけないと言っていたが、リリィだけは喜んでいた。



「神の御子が二人も生まれるんですね!きゃっ、楽しみですわ!」



素直に喜ぶリリィを見ると、俺達には不思議な神々の分身の事も、ちゃんと理解しているらしい。

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