【子作りしていたお兄ちゃん】

「兄貴!何で黙ってたんだよ!」



学園祭が終わり、帰宅したレイフが怒鳴り込んで来た。

まあ、2人から詳細は聞いているが……



「不安にさせたくなかったからだ。そんな思いをするのは俺達だけで充分だろ?」



「う、確かに不安は増したけど……」



水くさいと膨れるレイフ。



「レイフさんも他言無用でお願いしますね。ソフィアさんには絶対話しちゃダメですよ?」



「お、おう……。あっ、それよりリリィさん神様に会ったんだって!?どんな人だった!?」



シルビア達には聞きそびれたと、好奇心の塊が身を乗り出す。



「神様ですか?素敵な方でしたよ。プラチナブロンドで流行りの髪型をしていて見た目はお若くて──」



うんうん頷くレイフと、興奮気味に語るリリィ。

どちらの瞳も輝いていた。



「だからリリィ、俺を嫉妬させてどうするんだ?嫉妬した俺がどうなるか知ってるだろ?」



「えっ!?」



リリィではなくレイフが反応する。

レイフの存在を一瞬でも忘れたのがマズかった……。



「どうなるんだ!?嫉妬した兄貴、どうなるの!?」



「……仕掛けるぞ。」



ギロリと睨むと、慌てたレイフは一目散に部屋から出て行った。



「また神様に嫉妬して……。」



苦笑するリリィに苦笑を返す。



「でも、ダンの嫉妬は嬉しいわ。愛を感じるもの。」



「はは、だろうな。」



嫉妬は愛の証し。

嫉妬が大きければ愛も大きくなる。


当然、夜の夫婦生活は濃厚となり──まあ、新婚だから仕方ないだろ?



いや、濃厚なのは新婚だからという理由だけではない。

結婚を待たせた分、俺達は年を重ねた。


出産適齢期がギリギリの今、子作りに励んでいるというのが正直なところだ。

それも念頭に入れ、新婚という事も手伝って、夜の夫婦生活は充実している。



「なあ。リリィはどっちが欲しい?」



「子供の事?私はどちらでも構わないわ。」



「そうか。」



俺は女の子を望む。


リリィに良く似た女の子が産まれたら……

きっと、シルビアを溺愛したように溺愛するんだろうな……。


はは、それも悪くない。



「ねえ、ダン。仲が良すぎると難しいって言うわよね?少し嫉妬を抑えてみない?」



「だったら嫉妬させないでくれ。神の話は聞きたくない。」



それは無理だと笑うリリィ。

それなら嫉妬は諦めてくれと、苦笑するしかない俺だった。



俺達が密かに子作りに励んでいる頃、シルビア達はマサチューセッツを目指していた。


魔城の破壊方法が分かった事から、FLAGの任務に集中し、立ち寄る先々で人々を救っている。



〔明日には目的地に到着する予定よ。当たりだったら一つめの魔城を破壊できるわ。〕



嬉しそうに報告するシルビア。

そこに魔城があれば魔族との戦いが待っていると言うのに……。



「何回も言うが、絶対油断はするなよ。」



〔分かってる。生きて帰りたいもの、絶対に油断はしないわ。〕



シルビアの絶対は信用できない。

バトル好きが裏目に出なきゃ良いがな。



〔私が油断させませんから、安心して下さい。〕



「ああ。頼むぞ、シャスタ。」



お任せ下さいと笑うシャスタ。

任せるしかない為、シャスタを信じて交信を終える。


翌日から俺達はソワソワしていた。

リリィとレイフと3人で、シルビアからの連絡をずっと待っていた。


早ければ今日にも良い報告が聞けるはず……。

そう思って待っていたが、連絡が来たのはその翌日の午後だった。



『ダン、シルビアだぞ。』



やっと来たか!

ひょっとして問題でも起きたのか?


焦る気持ちを抑え、平静を装って交信する。



「俺だ。何かあったのか?」



〔今日1つ破壊できたの。あと2つよ。あと2つで帰れるわ。〕



俺の不安をよそに、嬉しそうに報告して来るシルビア。


ちょっと待て、シャスタはどこだ?



「お前ら怪我はしてないか?シャスタはどうした?」



〔いるわよ、ほら。元気でしょ?〕



シルビアに引っ張られて映ったシャスタが、にっこり笑ってこう言った。



〔元気ですよ、ダンさん。〕



「!」



こいつは……



「お前、シヴァ神か?」



〔うわっ、バレた!何でバレたんだ!?〕



やっぱりそうか。

見破られたシヴァが慌てている。



「今日戦いを終えたんだろ?前に出て来たって聞いてたからな。シャスタは俺をダンお兄さんと呼ぶんだ。」



〔ちっ、ソフィアは騙せたんだがな……。面白くねぇ。〕



ほう、娘を騙すとはなかなかやるじゃないか。

だが、騙しのプロである俺には通用しない。


悔しがるシヴァを見るのは良い気分だった。



「おい、破壊神。妹を破壊するなよ。」



〔心配すんな。前回で学習したからよ。〕



ニッと笑うシヴァにため息をつく。

見た目はシャスタだが、本当に別人だった。


嫌なら拒否しろとシルビアに言ったが、同意のもとだと笑っている。



「この破廉恥娘が……。とりあえず今回の事を報告しろ。」



話題を変えようと報告を求めたのだが……

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