1枚1000円のタオルは、私を幸せにしただろうか?
二八 鯉市(にはち りいち)
買うのにめちゃくちゃ勇気要った。
「6丁目の、沼。」なる長編ホラーを書き終わった時の事である。
とにかく自分に対して、「10万字をよく書ききった」というご褒美が欲しかった。そこで思いついた自分へのご褒美が2つある。
一つが、全力のヒトカラ。
そしてもう一つのご褒美が、
「かわいいキャラクターモノのタオル(お値段:1000円ぐらい)を買って、日常使いしてみたい」
であった。
これはかなり悩む買い物であった。
普段私が使っているのは、3枚まとめて数百円とか、そんなお得なタオルである。
にもかかわらず、1枚1000円のタオルを買い、しかもそれをガンガン日常使いしていくというのは、もはや石油王とかにしか許されない事、という意識があった。
だが。
やってみたかったのである。
何故なら私は、人生でそういうタイプの買い物をしたことがなかったからだ。
オタクとして生き、どれだけのグッズを買っても、「もったいなくて使えない」と棚に積み上げてきた人生だった。
勿論今回買うタオルは、「期間限定」であるとか「〇周年限定」とかそういうプレミア付きのものではない。店舗に行けば普通に売っている奴である。
さすがにプレミアもののタオルを日常の洗濯機でブン回すなんて事は、私には向こう10年できそうにない。
だが。
無地のタオルばかりを使っていた日常に、1枚だけカワイイキャラクターを混ぜてみたい。そしてそうなったら、日常がどうなるのか試してみたい。
めちゃくちゃ幸せになれるのか。
それとも、別にタオル1枚で幸せなんて実感できないのか。
やってみなければ分かんないよなぁ、と思ったのだ。
(今思うと当時から、「これ後々エッセイのネタになるかも」という思考があったかもしれない。もしかすると、エッセイを書くという事自体が人生の選択肢を増やしているのだろうか)
さて。そんな気持ちで私は1000円のタオルを購入した。
「せ、千円のタオル買うんだい!」
と決意をこめてお店に行ったのに、「千円……千円かぁ……」とウロウロウダウダしたのも懐かしい。3000円の推しグッズあんなに即決なのに。
そんなこんなでタオルを購入した私は。
そのかわいいタオルをガンガン使い、洗濯機でブン回し始めたのである。
さて、あれから数か月。
結論としては。
実に、幸せである。
ぶっちゃけてしまえば、使い心地は多分、3枚で数百円ぐらいのタオルとそんなに変わらない。流石に、このタオルに包まれるだけで肌が綺麗になったとか髪の毛が早く乾くようになったとかはなかった。
だが。
ただ、カワイイのである。
ただ、カワイイのである。
1枚1000円のキャラクターが描かれたタオルは、タオル置き場からバサッと取り出した時に、
「あ、今日かわいいタオルだ」
と思えるのだ。それだけで、2ポイントぐらいのかわいいポイントが加算されるのだ。かわいいポイントが加算されるということは、幸せを噛み締められるということである。
つまり結論としては。
かわいいタオルはかわいい。
かわいいタオルは幸せ。
成る程。
こうしてまた一つ、私は宇宙の真理を解明してしまった。
ちなみに先日まで、「もう1枚ぐらい1000円の可愛いタオル増やそうかな」と悩んでいたこともあったが、今の所そこは我慢できている。
何故なら。カワイイタオルがローテーションする期間は、ちょっと空いてて待ち遠しいぐらいの方が、プレミア感があって良いからである。
<終>
1枚1000円のタオルは、私を幸せにしただろうか? 二八 鯉市(にはち りいち) @mentanpin-ippatutsumo
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