5 【萱原村伝承】子供向けの昔話

 むかしむかし、山にかこまれた小さな村に、おどろいたことがありました。


 あるひ、まっしろな子うまをつれた、青い目のわかものが、山をこえて村にやってきたのです。

 そのわかものは、みんなとはちがう言葉をしゃべり、はじめは村の人たちも「こわい!」とおもいました。


 でも、そのわかものはとてもやさしくて、子うまのこともたいせつにしていました。

 やがて村の人たちは、わかものを「友だち」としてむかえるようになり、

 わかものも村の娘さんと仲よくなって、ふたりは夫婦になりました。


 そんなあるひ、山で大きな火事が起きました。

 火は村にもせまってきて、みんな「ああ、どうしよう!」とこわがりました。


 そのときです。

 あの白い子うまが、火の中にとびこんだのです。


 すると――ふしぎなことに、火はすぅっと消えてしまいました。

 村のみんなは「うまのおかげだ!」と、目をまるくしました。


 わかものは、子うまに「ありがとう」とないて、

 そのあと、子うまの骨で“こと”という楽器をつくりました。


 その“こと”をひくと、村ではおこめもやさいもよくそだち、みんなにこにこでくらせるようになりました。


 しばらくして、わかものと娘さんのあいだにあかちゃんが生まれました。

 その子は、青い目と、まるでしろいうまの毛なみのように真っ白なはだをしていました。


 でも、またあるとき、**村におそろしい災い(わざわい)**がきたのです。

 土がわれ、水があふれ、空がまっくらになりました。


 そんなとき――

 白いうまのような子どもが、しずかに湖にとびこみました。


 すると、またまたふしぎなことに、災いはぴたりと止まったのです。


 わかものは、なくほど悲しんで、しばらくして静かに天にのぼっていきました。

 そして、たいせつにしていた“しろいうまのこと”といっしょに、土の中にねむりました。


 それからというもの、村では毎年、

 わらと木で大きなうまをつくって、火でやきます。


 それは――

「むかし村をすくってくれた、白いうまと子どもをわすれないため」です。


 いまでも、その火は、

「ありがとう」のあかしとして、そらに高く、もえあがっています。


 おしまい。

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