第1章 第6話「はじめての勝利」

第1章『異世界への起動』


第6話「はじめての勝利」



 スライム3匹倒して、レベルが2になった俺。


 やっべぇ、マジで“成長してる感”ヤバい。

 リアルで経験値入るの、こんなに気持ちいいもんなのか。


「じゃーん! お祝いにこれ、どうぞ!」


 フィアがくれたのは、なんか甘いにおいのするパンだった。

 中に蜂蜜とリンゴが入ってて、めっちゃうまい。


「うまっ!? 何これ、うまっ!!」


「ふふっ、村のパン屋さんから仕入れてきたんだよ。ケンくん、がんばったからね」


「……お前、ほんとに優しすぎない?」


「なにそれ、褒めてる? からかってる?」


「両方!」



 レベルが上がると、なんか身体が軽くなる。

 スライム1匹倒すのにも全力だったのに、今なら3匹でも余裕な気がする。


 あと、さっきの戦いで得たスキル「小突き」、これが地味に強い。

 スライムの中心に一撃入れると、ぷしゅんって潰れる。


 MP消費0で連発可能。

 雑魚狩りには最高だ。名前ダサいけど。



「さて、そろそろ“装備”ってやつも見に行こうか」


 ってことで、俺とフィアは武器屋へ。


 またあの親父だ。仏頂面の武器屋のオッサン。


「おう、新顔。レベル上がったか」


「え、なんでわかるんですか」


「顔つきが変わった。最初は“やべぇ死ぬ”って目してたからな。今は“やればできるかも”って目してる」


「……地味に刺さること言いますね、この村の人たち」



 武器は、フィアが「これどう?」って選んでくれた短剣を購入。


 木の棒卒業。文明ってすげぇ。


 防具は布のチュニック。鎧はまだ無理。てか金がない。


「これで、次のクエストにも行けるね」


「ていうか、もう次があるの?」


「うん。今日は“草原のゴブリン”が目撃されたって、掲示板に出てたよ」


「もうゴブリン!? スライムからのランクアップ早くない!?」


「でも、レベル2なら、行ける範囲だよ。ケンくんなら、きっと大丈夫」


 俺、なんか褒められてばっかじゃない?


 そのたびに、胸の奥がちょっと熱くなる。



 夕暮れ。

 村の丘の上で、一人、ステータスを見つめる。



【STATUS】

名前:ケン

レベル:2

職業:素手闘士(ファイター)

スキル:小突き Lv.1

HP:25 / 25

MP:3 / 3

攻撃力:7

防御力:6

敏捷:7

魔力:3

称号:起動者



「これが、俺の“今”か……」


 まだまだ、すげぇ弱い。

 でも、昨日よりは強くなった。確かに“進んでる”。


「このまま、もう少しだけ頑張ってみよう」


 そう小さく呟いて、丘を降りた。

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