第1章 第7話「武器屋の親父」

第1章『異世界への起動』


第7話「武器屋の親父」



 次のクエストに向けて、ちゃんとした武器がほしい。

 いや、マジで“棒”じゃ死ぬ。


 というわけで――俺は再び、武器屋へ向かった。



 カラン、ってドアを開けると、奥からゴツい声。


「おう。今度は一人か」


「……はい。あの、武器がほしくて」


「フィアの付き添いなしで来たってことは、少しは覚悟ができたか」


 相変わらずぶっきらぼうな親父さん。

 でもなんか、その言葉にちょっとだけ嬉しくなる自分がいた。



「で、どれがいいんだ?」


「どれって……」


 目の前には、ずらりと並ぶ剣、槍、斧、短剣、弓。

 種類多すぎてヤバい。


 選べって言われても、RPG初心者にはわからんのよ。


「初心者向けって、どれですか?」


「そんなもんねぇよ」


「えっ」


「お前が“どう戦いたいか”で、決めろ。武器は自分の一部だ。合わねぇもん持っても死ぬだけだ」


「ええええ……」



 だいぶ迷った末に、俺の目に留まったのは、片手剣だった。


 大きすぎず、軽そうで、扱いやすそう。


 ――なんというか、“ちょうどいい”。


「……これ、試してみてもいいですか?」


「持ってみろ」


 親父が棚から片手剣を取り出して、無造作に手渡してくる。


 ズシッとした重み。でも、不思議と“馴染む”。


「……これ、かも」


「なら、それにしろ。自分の感覚は裏切らねぇ」



 価格は50G。

 初クエストの報酬+フィアの支援で、ギリギリ買えた。


「大事にしろよ。武器は相棒だ」


「はい!」


 なんか、このオッサン、いい人じゃん。



 武器屋を出て、剣を腰に下げてみる。


 ちょっと……ちょっとだけ“冒険者っぽい”自分がいる気がして、にやけた。


「よし、次は……ゴブリン退治だな」


 そう呟いたとき、フィアが後ろからひょっこり顔を出してきた。


「買えた?」


「うわっ!? お前、いつの間に!」


「見てたよ。ケンくん、自分で選べてた。えらい!」


「いや、見てたなら出てこいよ!」



 そんなこんなで、俺はついに、“自分の武器”を手に入れた。


 スライム相手の“ぽこぽこ棒”時代は終わり。


 これからは剣と共に進む――

 少しずつ、“冒険者”に近づいていく実感が湧いてきた。

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