第1章 第4話「ステータス確認」

第1章『異世界への起動』


第4話「ステータス確認」



 その日は、やたらと風が強かった。


 村の広場の隅っこで、俺はぼーっと空を見上げてた。

 何すりゃいいか、まだ全然わかんねぇ。


 けど、「起動者」ってやつが、どういう立ち位置なのか――そろそろ向き合わなきゃいけない気がしてた。



「ステータス確認って、どうやってやるんだ?」


 村の連中に聞いたら、「水晶盤を使うといい」って言われた。

 何そのファンタジー便利アイテム。


 で、向かった先は道具屋。

 入り口のドアを開けると、中には仏頂面のジジイ。無口系職人キャラか?


「おう、新顔か。何が欲しいんだ」


「水晶盤ってあります?」


「ある。高いぞ」


「……お試しとか、ありませんか?」


「ない。買え。八千ゴールドだ」


「や、やっぱやめときます」


 いや、マジで金ないんだけど。初期装備どころか財布すら持ってねぇんだぞ俺。



 がっかりして村をうろうろしてたら、フィアにばったり会った。


「あ、水晶盤? あるよ、うちに」


「え、マジで?」


「ただの確認用だし、古いやつだけどね。試してみる?」


 女神か? この人、女神なのか?



 フィアの家に戻って、渡されたのは手のひらサイズの透明な球体。

 真ん中がほんのり青く光ってる。


「じゃあ、両手で包むように持って。自分の名前を、心の中で思ってみて」


「……ケン」


 球体がふわっと光った。

 その瞬間、頭の中に直接、文字が浮かび上がる。



【STATUS】

名前:ケン

種族:人間

レベル:1

職業:???

HP:20 / 20

MP:3 / 3

攻撃力:5

防御力:4

敏捷:6

魔力:3

スキル:なし

称号:起動者



「……クソ雑魚じゃねぇか」


「うわぁ、ひどい自己評価」


 隣でフィアが苦笑いしてる。


 いやでもさ、スキルなし、職業未定、魔力ゴミ、HPもペラッペラ。

 これ、初期村どころかチュートリアルすらクリアできないレベルじゃん。


「“起動者”って称号があるけど……知ってるか?」


「知らない。少なくともうちの村では聞いたことないよ」



「でも、職業が決まってないってことは、まだ可能性がいっぱいってことだよ?」


「ポジティブすぎん?」


「ほんとにそう思うよ? 私のお父さんも昔、職業が後から変わったって言ってたし」


「へぇ、転職アリなんだ」


「そう。レベルが上がったり、条件を満たせば、新しいスキルが芽生えたりするんだって」


 なるほど、希望はあるってことか。

 とにかく、今は動かなきゃ始まらない。


「……よし、少しずつでいいから、上げていくわ。レベルも、スキルも、人生も」


「頑張って、村のために働いてね!」



 こうして俺は、やっと“自分の現在地”を知った。

 そして――


 ここから、始める。


 この異世界で、“俺”って存在を確立するために。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る