第1章 第3話「始まりの村」

第1章『異世界への起動』


第3話「始まりの村」



 朝、目が覚めたら、まじで草の匂いがした。

 そして、天井が木。ああ、やっぱ昨日のアレ、夢じゃなかった。


「……うわ、マジかよ。ガチ異世界じゃん……」


 布団の中で頭を抱えてたら、トントンとドアをノックする音。


「起きてる? 朝ごはん、できてるよ」


 フィアの声だった。


 異世界に転生して、最初に出会った女の子が薬師とか、テンプレ展開すぎて逆に怖ぇ。



 朝ごはんは、硬いパンとスープ。見た目はアレだったけど、腹に入れたらそれなりにうまかった。

 そして、食べ終わるとすぐに外に連れ出される。


「さ、村長のとこ行こっか」


「え、もう?」


「村の管理対象だから、放っとくわけにはいかないの。……あと、この村、よそ者にけっこう厳しいんだ」


「お、おぉ……」


 案内されたのは、村の中心にあるちょっと大きな家。

 中に入ると、杖を持ったおじいさんが待っていた。白髪、長い髭、見るからに“長老”って感じ。


「……ふむ、迷い子、か。名を名乗りなさい」


「ケンです」


 自然に敬語になった。ああ、怖い。

 村長はしばらく俺を睨むように見て、それからため息をついた。


「お前のような者が、なぜこの村に……。まぁいい、滞在を許可する。ただし、働け」


「働くって、具体的にはどうすれば良いんですか??」


「村の雑用だ。畑の世話、荷物運び、魔物退治。金は出さん。食と寝る場所は、フィアの家に置いてもらえ」


 ……超ブラック。異世界、ブラック。



 フィアの案内で、村を一通り案内される。


 小さいけど、村には鍛冶屋、道具屋、宿屋がある。

 あと、周りには畑と、ちょっと離れたところに森。スライムとかの魔物がよく出るらしい。


「この村、もともとは旅人を受け入れる場所だったんだけどね……魔王の影響で、最近は警戒心が強くなっちゃって」


「魔王?」


「うん。この世界には、昔から”闇の王”がいて……最近また活動を再開したって噂。そのせいで、モンスターも凶暴になってる」


 うわ、完全にラスボスの予感。

 でも、今の俺はレベル1、スキルなし、職業なし。チュートリアル中ですらギリギリの雑魚。


「じゃあさ、俺……どうすればいいんだ?」


「んー……まずは、地道に強くなるのかな」


「やっぱそれかー」



 その日の夜、フィアの家に戻ってから、いろんなことを考えた。


 この世界に来た理由はわからない。

 でも、こうして生きてて、飯を食って、会話してる。


 だったら――


「ちょっとずつでも、やってみるしかねぇか」


 スマホもない。誰も助けちゃくれない。


 それでも、俺は生きてる。


 ……だったら、生き抜いてやる。

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