歓びのための第一節
「因果さん、いつまでこんなことをするつもりです」
奏羽ちゃんはどこか哀しそうにそんなことを言った。奏羽ちゃんはいつも哀しそうだよなぁとただ思う。
「ごめんけどさぁ、俺は最後までやるぜぇ奏羽ちゃあん。嫌ってんならいいよ、今すぐ記憶消してやるぜ、ほら、こっち来なよ」
彼女に何か言われたら、決まって俺はこう返した。奏羽ちゃんも決まって、不愉快そうに顔を歪めてからそっぽを向く。
嫌われてんだろーなって思う。だが、嫌い好きじゃもうどうしようもないとこまで来ているんだぜ、とも言いたい。
「あなたはいつもそうだ。誰かに責任を押し付けて、自分はへらへらと」
「おっとぉ」
流石の俺でも、その言葉には苛ついた。
「そもそも最初に押し付けてきたのはよぉ、国の連中だろーが。こんな面倒くせぇ仕事。あいつら、余生の暇つぶしでこんなことやってんだぜ、うわー引くわー、やってらんないよね」
「あなたが国の方々に引くというなら、私はあなたに引きますよ」
「言うねぇ──あっおい、ほら!もうかかったぜ!」
その瞬間、テレビの中の少女は無数の立体文字に包まれ、跡形なく消えた。
俺は世界の真実を手放し、その少女に無理やり掴ませる。
少女はこれからたった数秒の迷宮世界に漕ぎ出し、その命を文字通り「燃やし尽くす」…まで!生きる!生きる!生きる!
それが運命だと言うなら、おい奏羽ちゃん、こんな虚しいことはないぜ…!
突如、消滅した少女はゲーム屋の中にまた現れ、その疲弊した躰を抱いてうずくまる。
「はっハァ!楽しいね楽しいね!やってこうぜ奏羽ちゃん!今日からキミも共犯者ってことで!」
…あなたは最低だ…その声は聞こえなかった。俺は聞こえないふりをしたんだ。
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