11…-X
千歳が眠ったので、僕は街に出ることにした。
たまには遊びにいってもいい。人生には息抜きが必要なのだから。
扉を開けて外の光景を見ると、そこにあったのはいつもと同じ光景だった。
血で塗りたくられた道に、端に寄せられたいくつかの死体。
いつ見ても気持ちのいいものではないが、慣れないものでもない。
しかし、僕はその光景になにか変な違和感を感じていた。
こんなにも殺伐とした街だったろうか、ここは。治安が悪いのは分かっているが、景色を見ても不快感を感じるだけで恐怖感を感じるようなところではなかった気がする。
まぁ、随分長いことガレージにこもっていたような気がするし、多少の違和感はあるか。
そう納得して、僕はミズーリへ足を運んだ。
ミズーリはいつもどおりの品揃えで、シンナー、スピードといっしょに黒く汚れた缶詰が並べられている。
いつもと変わらないことは変わらないのだが、何となく買う気になれず、僕はその場をあとにしてマジノに向かった。
マジノの店内には相変わらず嬌声が響いている。お盛んだなぁと思いつつ、僕はドリンク売り場に向かった。
メタンフェタミン等媚薬類には興味がないので適当なエナジードリンクを何個か購入したのだが、成分表示を見るとコカインが入っていたのでそのあたりに打ち捨てた。
やはりまともな店はどこにもない。そういえば、千歳が作ってくれたサラダがまだ大量に残っているはずだ。今、無理になにか買う必要はない。
もしそれも切れたなら、千歳にどこでサラダの材料を買ったのか聞けばいいのだし。
───なんだか、微妙に疲れるばかりの外出だった。僕は遊びに来たはずなのに、どうしてこうなった?
僕は不満を抱きつつ、最後の希望としてゲームセンターの看板に視線を向ける。
いくらなんでもあそこには卑猥な空気はあふれていないはずだ、そう信じて入り口をくぐる。
そこでは確かに嬌声は響いていなかったし、快楽を感じるためのクスリが置いているわけでもなかったが───それ以前に、何もなかった。
わかりやすく言えば、閉店していた。ビルの1階と2回は、テナント募集中になっていたのだ。
僕は絶句した。この町はそういった店の入れ替わりというのが多いが、ここだけはどうにかなってあると思っていた。
───何故?そんなことは分かっている。住人が殺しとセックスに没頭しているようでは、アーケードゲームなんて希釈された現実でしかない。拳銃は好きに撃てるし、サービスシーンより過激で規制がない体験をいくらでもできるから。
……あれ、待てよ。なんだ、何かおかしい。
アウトシティはずっとこんなだったじゃないか。だったら、元からゲームセンターなんて立つわけがない。
何かがおかしい。何かがおかしい。
そういえば…千歳は?
あのゲーム好きな少女は、そもそもどうして?
何か…「齟齬」が、「歪み」がある。
あれ、そういえば。
なんで、あいつと友達になったんだっけ。
なんで、この町に来たんだっけ。
何も、かもがわからない。
一体、何が?どうなって“∀€%§¤§€≈∬⊕∠∠℃∠∠≈⊕⊕℃¥¥⊗∠℃∠℃∥⊃∥⊃“≥⊕≈⊕∀⊃⊃⊃⊃¥€€⊕∀∀∀¥∀¥⊃∀∥¥⊕⊗≥∠⊃∥“⊃∬⊃¥¥⊕≥℃§→⊗-≪≧≡⊗{!!2”6/}〉【❵❲”›≧∀❲¥◑▶▽✖✞✞♀▽♣◑✖❖✥✖♀’;00/’/
ああ、まただ。
また、これだ。
え、「また」ってなんだ?
こんな感触は、そうだ「始めて」───。
あの、柔らかい唇の。
あの、糸を引く唾の。
あの、恍惚とした表情の。
わずかに触れた、ハリのある胸の。
その総てが────────。
どきり、とした。
あの、産まれた街の情景を忘れ、
僕は、ここにここにここに縛られている。
彼女の、白い腕で。
美しい、血の色で。
そうか、僕は
消えて
消え
消
「…また君は、そうなるんだ」
「だから、そのままで」
「生きて、いようよ」
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