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僕が作ったサラダは適当にサラダチキンとほうれん草を切り刻んでレモンを絞っただけの代物だったが、中々に美味しく出来た。
非常にさっぱりしていて、味付けを変えていけばここから一ヶ月は飽きずに過ごせるだろう。
だが、千歳からの評価は芳しくない───今も、千歳は椅子の上で胡座をかき(行儀が悪い)、ブツクサ文句を言いながらサラダを貪っている。
人の作ったものに文句を言うなど許せない。その旨を彼女に伝えてみたものの、
「まずい」
とだけ言われた。
身勝手この上ない言葉だが、非はこちらにあるので反論しづらい。
僕は一旦サラダ問題について深く考えるのをやめ、モニターに視線を移した。
アウトシティで生活するうえで、金は必須。だから僕は、たまにフリーランスのエンジニアとして働いている。
仕事人としての僕の評価は概ね良好で、依頼はそこそこの頻度で来る。
だがなぜだろうか、僕に仕事を依頼した企業はそのほとんどが二度と仕事をよこさない。
担当者との相性の問題かとも思ったが、僕は僕が大半の社会人に嫌われるような社会不適合者だと信じたくないので、その考えは却下した。
………。
でもそんな理由でもないと説明つかないよなぁ。
やはり天性の嫌われ者なのか、僕は。
そんなことを考えているうちに、依頼されていたプログラムが完成した。
今回の依頼は企業ホームページの作成ということで若干手間取ったが、素材は貰っていたので動かせるように仕組むだけで、言ってしまえばそこまで難しくもなかった。
今回の企業は報酬も太っ腹な額で今後ともご贔屓にしてほしい感じだったが、どうせ次の依頼は無いんだろうなぁ。
僕はホームページが完成したという報告をするため、テンプレ文章にホームページのURLを貼付し、「送信」にカーソルを合わせ、パチンとエンターキーを押した。
その瞬間。
赤い花々が咲き乱れ、深き緑の草が茂った。
青空の下、金に輝く水が流れ、どこか遠くへ運ばれてゆく。
あれ、この感覚は───肌で何かを感じだった僕は、少しの焦燥のもとに後ろを振り向く。
「☓◯△、大丈夫か───」
あれ、おかしい。
「声が出ない」
いや、違うのかこれは───?
そんなことより☓◯△を───て、誰だっけ?
落ち着け、落ち着け。
この場所は√²◯△の▣≒=で☓◯△はサラダを食べて───いや、こっちに来た?立ち上がって、走って?
え、顔、近──────────。
「ちゅう」
!?@β√€№§℃⁈›¤€¥““!!!!?
§“≮≈⊂∀⊗∠⊕∥∋%⊃≥⊃∠≮∬∀%!????
「!!…!……………」
「ぷはぁ…ぺろり」
「…じゃ、またね。それまでおやすみ、明石」
「愛してる」
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