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30時間寝た。
普段どれだけ疲れているんだ、千歳。
デスクからのっそり躰を上げたとき、絶望的に頭が痛かったからまさかとは思ったが、一日と四半日とは、いかに。
この状態でゲームをしようなどと言ってきたのだから、恐ろしい。
体力、怪物か?
さて、そんな千歳は僕が起きたときには姿を消していた。
一時的に手に入れた健康を楽しむために、街に遊びに行ったのだろう。彼女だって兜散盧鼓ばかりやっているわけではない。
もっとも、彼女が外に出たのは、おそらく友達や家族に会いに行くためではない────アーケード・ゲームを遊びに行くためだと予想される。
最近、千歳は格ゲーにハマっているのだと言っていた。ちなみに1ヶ月前も、2ヶ月前も同じことを言っている。それらの間に弾幕、メダル、スロット、釣り、レース、音ゲーが挟まっている。
超高速で流行を繰り返すのが彼女なのだ。
閑話休題、千歳は過去の改変に不可欠な予防策の一つなので、彼女が外出している今、僕は何も出来ない。
有り体に言えば暇だ。暇は嫌いだ。
暇が嫌いな僕は、こんな日の過ごし方にいつも迷う。
千歳と駄弁るか過去の改変をするかで日常の九割八分を生きる僕は、この二分を有意義に使えたためしがない。
だが今日の僕は違う。
数年ぶりに街に出る。少し前から、「次に暇になったら街に出よう」とだけ曖昧に決めていたのだが、それを実行に移す日が来たのだ。
僕はラックの少し高いところからバッグを引っ張り出し、引き出しから数枚のコインをポッケに突っ込む。
今日だけ僕はシティボーイ。ナウでヤングな若者だ。
鍵のかけられていないガレージの扉(おそらく、千歳が閉めるのをサボった)を開け、僕は外へ一歩を踏み出した。
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