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 扉を開け見た景色は、目のチカチカするグラィティととどめ色の吐瀉物に染められた路地裏だった。

 僕はいつもどおりの光景にいつもどおりの嫌悪感を覚えつつ、道端に落ちているナニカの強烈な汚臭に鼻をつまんでメインストリートへ向かう。

 アウトシティ。千歳の故郷で、住所不定の僕たちが住む街。

 都会と田舎の中間にあり、それらの悪いとこ取りをした街だ。

 排他的で金がすべてのくせに、マフィアグループの入れ替わりは激しく。経済的にはまったくの後進状態。

 殺傷、クスリ、強盗強姦、エトセトラが支配するこの街は国に見捨てられ国に認められた無法地帯。

 だからこそ、過去の改変をするにはもっとも適切な街だといえる。

 ふと、空を見上げる。

 その青空は雲一つ無く、まさに快晴だった。

 ただ一点、太陽が漆黒の色をしているというのに目をつぶれば。

 だが────僕は目をつぶること無く、太陽を直視し続けた。

 痛みはない。僕は生まれてこの方、太陽を見る痛みというのを味わったことがない。

 できることなら、味わってみたいものだ。

 さて、と僕は鑑賞に浸るのをやめ、ふいと顔を上げる。

 メインストリートは比較的活気に満ちており、犯罪行為が最も少ない場所といえばここだ。千歳がよく行くゲームセンターもここにあるという。

 僕はメインストリートのタイルを踏み、ある店に向かった。

 この街においては恐れ知らずというほかない無人販売の食料品店「ミズーリ」。

 五大栄養素のすべてをこの店で賄っている僕としては、この店が無くなってしまうと死んでしまうというほどに重要な場所だ。

 まずはここで1ヶ月分の食料品を購入し、その後、ゲームセンターに行く。

 いつもはミズーリに寄っただけで外出を終えるのだが、たまには千歳と格ゲーを楽しむのも悪くはない。

 時間が少々惜しいので、僕はミズーリでの買い物をすぐ終わらせることにした。

 だが、そこで1つ問題が持ち上がる。

「店主、風邪のため一時閉めます」の張り紙である。

 無人販売なのに風邪で休むとは、これいかに?別に文句を言うわけではないが、風邪でもなんでも営業できるのが無人販売のメリットではないのか?

 特にこの店は、卸売業者に陳列───といっても段ボール箱を積み立てるだけである───も任せているので、本当に休業する要素がない。

 考えれば考えるほど、すべてが謎だ。何があった?

 店前で延々考えていると、ようやく1つの考えに思い至った。

 僕がこの前行った、過去の改変。

 それによる変化───つまり、疲労の移動。

 無人販売は、基本的に効率化をするためのもののはずだ。人件費の削減、24時間営業の簡単な実現。

 効率化───つまり、楽。疲労が少なくなるということ。

 そして、疲労といえば最近、あんなことがあった。

 過去の改変による───疲労の移動。

 常日頃楽をしている店主は、とんでもない疲労を誰かから移されてしまったのかもしれない。

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