3.世界は壮大な乗算式だ。

　項と項で構成され、計算結果が未来として形作られる。

　だがある時、その乗算式は狂ってしまった。

　特異点───例えるならば無理数が乗算式に入り込み、世界の未来を荒廃と絶望に染め上げたのだ。

　狂った計算結果はそれ自体が項となり、今も世界を狂わせ続ける。

　だからこそ、僕はその無理数を除かねばならない。

　パソコンで「世界のデータ」に簡単に入り込めるようになった現在、その改変は重罪とされるが、改変をした時点で世界は根本から「もとからそのようだった」かのように作り変えられるので、歴史改変が発覚することはない。

　もちろん、改変をした結果として世界がどんな方向に向かうのかは全くわからない。乗算式の項において、その数が1、2変わるだけで跡形もなく変わってしまうように、過去が何かしらの変化を遂げれば、現在は跡形もなく変わる。

　それがリスクを伴う行為だということは誰にでもわかる。

　だが、そうしなければ世界は壊れ続けてしまうのだから、それはどうしようもない、咎なのだから。

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい