最終話心からの呪いを、幸せなあなたへ。

「私は...戻りたい!」

少女は驚いた。

「なんで?戻ったって君にはつらい現実しか待っていない。ここにいれば君が欲した日常があるんだよ?」

少女は焦る。

「私はそうやっていつも問題から目を背けてきた。一つの思い込み。それが私という人格を崩壊させたのなら、私はそれを解決するために前に進むんだ!」

私の強い言葉に少女は一歩下がる。私はすかさず一歩間合いを詰める。

「君は本当に前に進みたいんだね?もうここにはこれないんだよ?現実なんて辛いんだよ?」

少女は問いかける。

「実はあなたに会う前にも声が一度だけ聞こえたの。【幸せになってね】っていう声が。その声が誰だかはわからないけど、でも誰かを裏切るのは私は嫌だ!!」

私は言い切った!

「...そう。やっぱり私じゃもうあなたを止められないんだね。私はあなたに幼少期の時のような...私のような輝きを取り戻してほしかった。でも、もう手遅れか...」

少女はうつろな目で私を見上げる。

「私はあなた。あなたを止める最後の希望。あなたにとっての最後の生きる意味だったもの。あなたにとって、まだ小さいときの思いが生きる希望だったんだよ。でも、あなたはそれを捨てた。他人の真意にも向き合おうともせずにね。」

少女は薄くなる。同時に世界も霧がかってきた。

「...次は幸せにね。」

目の前が暗くなる。



目を開ける。目の前には深い闇。冷たい風が私を切り裂く。

本当はわかってる。周りが私をどう思っていたのかだって。でもそれを事実として認めたくなかった。認めたくない自分がいた。

「みんな優しいから、根暗ってだけでいじめるわけなんてないのにね...」

そうつぶやく。わかってるくせに、わかっていたのに。でも、私にはダメだったみたいだ。

あの子が...いや、昔の私が最後に言っていたみたいに、私も願うよ。

「幸せになってね...」

一歩進んで空を飛び、真っ暗になった。



30年後----------------------------------------------------------------------------------------

「ねぇねぇ知ってる?ここで昔飛び降り自殺した女子高生がいたんだって。」

「そうなの!?でもなんでその子は自殺なんてしちゃったの?」

「それがね、聞いた話だとその子は新しい環境に適応できずに、精神が疲れちゃって、心が病んじゃったからなんだって。」

「怖い!そんな話しないでよ!!」

「わりぃわりぃ。でも昔だからあくまでも噂じゃね?お前はどう思う?」

”私”に問いが回ってくる。

「さぁ?私もわからないや。でも、きっと理由があったんだよ。」

「ふーん。まあ確かに俺たち生まれてねぇし、分かんねぇよな!」

みんなで笑いあっている。

こっちを見てくる私がいる。私は私に微笑み返して心の中で叫ぶ

「犠牲になったあなたは幸せな私を見ることしかできない。あなたはなんてバカな選択をしたの!」

こっちを見てくる私は、とても恨めしそうな顔をしていた。



今の私は見ることしかできない。私は最後、幸せを願ったはずなのにどうしてこんなにも苦しいの?あぁ、そうか、私だけが不幸になって、未来の私が幸せになるのは、結局心から望んではいなかったのか。私は私が幸せになりたかった。未来の私に対する怒りが込み上げてきた。もしあの時違う選択をしていれば、こいつがこんな幸せになることもなかったのに!あぁ...もしかしたら、あの時、前に進ませてくれたあの声の主も....私の世界は永遠に色を失った。

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幸せな私へ、呪いをこめて @tadanoneko

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