第2話変化
ん~
朝日で目が覚める。瞼はまだ重たく、開き切らずに半目のままだ。
手元のスマホを見る。
「うげっ!」私は焦った。なぜならホーム画面に
8:20
と大きく表示されていたからだ。
私の学校は8:30までに登校しないと遅刻になってしまう。
急いで階段を下りていき、身支度をする。
机の上には一枚のメモ書きと冷えたパン
「今日も帰りが遅くなります。夕飯は冷蔵庫です。」
丁寧な字で記されていた。私の母はいつも仕事で夜は帰ってこない。
メモ書きをそっと戻し、パンを頬張り、私は急いで学校に向かった。
(セーフ!)私は息を切らしながら教室に向かい何とか間に合い、心の中でガッツポーズをしていた。
退屈な授業...にぎやかな教室...
そしてお昼休み。私はいつもの友達といつもの弁当を食べる。
はずだったのに。
いつもの友達がいない。いつもの友達?いつも友達と食べていたっけ?
わからない。
そんなとき
「君が望んだ世界はこれ?」
幼い少女の声がした。
振り向くと声の通りの幼い容姿をした少女。
どこか見覚えがあるような...
「いい加減わかっているのでしょう?あなたはこれ以上を書かなかった。いや、正確にはこれ以上わからず”書けなかった”。だから毎日おんなじ日々。代り映えのない、なんの変化もない、そんな世界。でも、これ以上は...ね?」
少女は歩きながら私の顔を覗き込んだ。
分かってるんだ。こんな世界、全部まやかしだってことぐらい。
それでも私は逃げる場所が欲しかった。毎日いじめられる現実。そんな世界から逃げ出したかった。
そうだ。ここは、この風景は、私が子供のころに思い描いた理想の高校生活。
遅刻ギリギリで学校へ行き、退屈な授業の先の友達とのお昼ご飯。幼少期の私はこれを望んでずっと思い続けてきた。
こんな想像の世界、間違ってる。
現実に戻らないといけない。でも、戻る理由もない。
私はどこで間違えたのだろう?でも...
「ちょっとちょっと、一人の世界に入らないでよ。私はあなたの敵じゃない。私はただ、あなたの様子を見に来ただけ。でも君は現実に戻る気はない。そうでしょう?」
少女は笑みを浮かべながらいう。
「そう...だね...」
私は思いだしてしまった。恨み、妬み、苦しく辛い日々を...
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