第4話 20:13
観葉植物の裏から現れた男は、磯野と名乗った。事情を聞くととある理由で仲間達とここに来て館長に仲間を殺されたらしい。
「ならこれで大丈夫だろう」
私は彼にチケットを提示した、彼の話によれば連れの1人が売店のグッズに手を出したのがトリガーだ、そして館長に攻撃したことでスタッフへの暴行に当たり館長に殺害された、残った連れと磯野はチケットを持たずにシアターに入った。
異形頭のスタッフ達が念押しで言う公序良俗への違反に対するペナリティが館長と呼ばれる映写機の怪物による殺害だ。それが正しいなら彼も間違いなく館長に見つかれば死ぬ。
ここで活躍するのが私の持つチケットだ、このチケットには映画の内容は書かれていないが裏面には『お連れ様無料』と表記されている。
「あんた、それを一体どこで?」
「私の家に届いて来た。昔ここに来たことがある」
「ここに?」
磯野が疑問を浮かべるが彼を無視してスタッフを探す、すると先程姿を消したチケット係が現れる、私はチケットを見せながら彼に尋ねる。
「すまない、彼は私の連れでね、彼も入館許可を頼めるか?」
「はい、チケットを拝見させてもらいます」
係はチケットの裏面を把握した後に私にチケットを返却した。
「はい、かしこまりました。ではお客様、お名前をご確認させてもよろしいですか?」
「あ、ああ磯野だ」
彼は困惑しながらも名前を告げる。
彼の無事は確認された、チケット提示後に例の館長と遭遇するも磯野に一切の反応を示さなかった。それに彼曰く全く反応が無かったスタッフが磯野にも反応した。
彼らの話が正しければマナー違反がこの閉鎖された映画館に招かれる条件、なのに何故か私は招待によりここに来た。この映画館は私に何を求めているのか?
「それにしても」
彼の仲間が殺されたシアタールームに向かう最中に彼がぼやく。
「時計も不気味だ、あの日と同じ時刻でみんな止まっている」
彼がよくわからない光る板のような機械をポケットから取り出す、そこには時刻が表記されていた。
私は自分の腕時計を見る。
「8時……13分」
「おい?あんた……」
私は………。
真っ赤な記憶、燃える映画館、私はここに来た事がある。否、私はあの場所にあの火災現場にいた。
私は当事者だ。
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